ICH Q5C 生物学的製剤の安定性試験

ICH Q5Cは生物学的製剤の安定性試験についてのガイドラインです。生物学的製剤はタンパクやポリペプチドからなり、その立体構造が薬理活性と密接に関わっています。立体構造は一般的に共有結合以外の結合によって維持されるため、結合力が低く、温度・酸化・光・イオン・せん断力などの影響を強く受けます。このため、化学製剤とは異なる保存条件が必要です。

安定性の評価においても、化学製剤とは異なったものが必要となります。薬理活性はタンパク質の量だけではなくその構造にも依存するため、活性自体を測定する必要があります。活性の評価法として、物理・生物・免疫学的方法での検証を行います。検証は効能・純度・品質に影響を与えうる様々な条件で行います。

Q5Cの対象となるのは主にタンパク質とポリペプチドです。対象には組織や体液、培養細胞から抽出したもの、組み換えDNA技術を用いたものを含みます。抗生物質、アレルゲン、ヘパリンやビタミン、血液、血球成分などは対象外です。

有効成分では化学製剤と同様に始めの少なくとも3バッチを安定性試験の対象とします。製造方法は最終製品と同等のものである必要があります。有効期限が6ヶ月以上であるものは最低でも6Mの結果が申請時に必要となります。パイロットスケールの試験結果でも申請は可能ですが、後で製造スケールでの安定性試験結果の報告を必要とします。製造中間体においても安定性の調べておきます。製剤においてもほぼ同じですが、使用期限は安定性試験の結果から設定することになります。

安定性試験には状況によりMatrixingやBrancketingが使用可能です。申請書類には、安定性試験の詳細な手順の記載が必要です。設定予定の使用期限までの安定性試験結果を準備し、統計手法は3局のガイドラインに従う、と記載されています(どのガイドラインを指すのか不明です)。

安定性の指標の一つとして、力価(Potency)があります。力価は製品の単位量当たりの効能(活性)のことで、定量的に評価します。適切な対照がある場合にのみ研究室間の差を評価できます。対照サンプルは可能であれば国内/国際的な標準を用いますが、多くの場合入手が困難であるため、対照サンプルを準備する必要があります。その場合には対照サンプルの校正方法の設定が必要となります。活性に影響を及ぼす補体の結合についても評価します。純度も安定性の指標の一つですが、タンパク質は糖やリン酸などによる修飾を受けるため、純度を特定することが困難です。2つ以上の方法を用いて純度・分解産物の評価を行います。方法としては電気泳動クロマトグラフを用い、分解産物があった場合には分解によるリスクを評価します。これらの他に、外観・微粒子・pH・水分量・無菌性・添加剤の分解・包装の影響なども指標として安定性試験での検証を行います。

安定性試験の条件として、通常試験(保管条件での試験だと思われる)と共に、加速/ストレス条件下での試験を行います。包装の透湿性はほぼ無視できるようです。加速試験は長期試験の理解のために、ストレス条件下での試験は輸送時などを想定して行います。化学製剤のような環境の指定はないため、状況によって環境を決定します。光条件・包装容器の影響・凍結乾燥品の溶解後の安定性なども調べます。

生物学的製剤の有効期限は数日-数年とレンジが広いため、一般的な試験頻度の設定は困難です。0.5-5年の有効期限を持つ製品に対してのみ、ガイドラインでの頻度の設定があります。1年以下の有効期限であれば、始めの3ヶ月は毎月、それ以降は3ヶ月おきに、1年以上の有効期限であれば、始めの年は3ヶ月ごと、二年目は6ヶ月おき、それ以降は1年おきに試験を実施します。

安定性試験の規格は製品ごとに大きく異なり、一般的には設定できません。品質を確保できるよう、統計結果にしたがい設定します。

化学製剤と同様に、製剤の保管温度、有効期限は現地の規制当局の指定にしたがいラベルに記載します。凍らせないなどの特記事項があれば、同時にラベルに記載します。