粉体特性1

錠剤の製造において、粉体の特性は重要な要素となっています。粉体特性のうち、最も重要な要素の一つはその粒子のサイズ(粒子径)です。原料の粒子サイズ、粒度の分布、形やテクスチャは錠剤を成形する際に品質に影響を及ぼす要素となります。通常粉体の微粒子は球形ではないため、サイズは球形として換算したときのものとして計測するのが一般的です。粒子サイズはふるいやレーザー光分散法で測定するのが一般的です。粒子の形を観察する場合には顕微鏡を用います。粒子径の分布は通常対数正規分布し、正規分布にはならないようです。

粒子径、特に有効成分の粒子径は製剤にとって重要な要素となります。有効成分の粒子径は溶出性、含量均一性に影響を与えるとともに、その付着性や静電気の生じ方によって製造にも影響を与えます。粒子径が小さいほど溶出は高く、含量均一性もよくなる傾向にありますが、通常流動性や付着性は悪くなります。APIの製造ロットによるばらつきが製剤の品質のばらつきに直結する場合も多く見られます。

粉体の密度も成形性や流動性に影響を与える要素となります。粉体の密度は物質としての密度、かさ密度、タップ密度の3種類として測定されるのが一般的です。物質としての密度は間隙の空気を取り除いた密度で、ガスを充填させて測定します。物質密度には物質内の、ガスの交換が起こらない内腔は含んでいます。かさ密度は粉体取り扱い時の体積、タップ密度は粉体を叩いてやや圧密したときの密度を指します。タップ密度は球形に近い粉体ほど高くなる傾向があるようです。

粉体の流動性は打錠などで特に重要になるパラメータです。流動性の低い粉体は臼に入りにくいため、錠剤質量のばらつきの原因となります。流動性は水分含量や保管条件の影響を受け、粒子径が大きく、球形に近い粉体ほど高くなります。かさ密度とタップ密度の比を圧縮性指数、かさ体積とタップ体積の比をHausner比とよび、共に流動性を示す指標となります。流動性の指標としては安息角(山状に盛ったときの山の裾野の角度のこと)もあります。安息角は簡単に測定できるため、頻用されています。角度が小さいほど(山が緩やかなほど)流動性が高く、角度が高い(山が急峻)なほど流動性は低くなります。Shear Cellと呼ばれる、ずり抵抗を測定する装置もあり、より直接的に粉体の流動性を測定することもできます。ただし、Shear Cellでの測定は簡便性が低いため、製造の現場ではそれほど用いられていません。