ICH Q8 Part2 医薬品の開発 Annex (1)

ICH Q8は医薬品の開発に関するガイドラインです。Part2ではPart1の詳細事項についてAnnexureとして解説されています。AnnexにはQbDの基礎、Part1の記載事項の実際の運用、QbDと品質システムを組み合わせたリスクベース開発についての情報が提供されています。

医薬品の開発では、医薬品が患者の必要性に合致し、必要な機能を持つようにすることが必要です。開発のアプローチはその開発を行う企業や医薬品の種類によって異なります。開発は経験則に沿ったものであっても、よりシステマチック(実験デザインや統計的アプローチ、デザインスペースなどを指すと思われます)なものであってもよいとされています。QbDを用いた、よりシステマチックな開発方法の使用も可能です。システマチックな開発による製品・製造方法等の理解は、規制の柔軟性に繋がります。承認申請情報には科学的で、リスクベースでの検証の結果を記載します。承認申請情報の量と質が規制の柔軟性を決定します。

医薬品の開発では、最低でも 製品が目指す品質の情報(QTPP、Quality target product profile)、特に重要な品質上の性質(CQA: Critical quality attributes)、有効成分・添加剤のCQA、適切な製造工程選択・製造制御法の戦略 の4項目を検証する必要があります。QbD的アプローチを取る場合には、さらに工程や処方のシステマチックな評価、工程・製品の理解から生み出された工程制御法についても明らかにします。

QTPPとして提供が必要な情報には、用途・投与経路・剤形・投与システム(Delivery system)、含量、包装、有効成分の活性化や輸送に関わる性質、品質上の重要性質が含まれます。CQAは規約品品質の担保に必要な規格などのことを指し、Q6(規格)で記載されている内容に対応するもののようです。CQAは剤形により異なります。品質リスクマネジメント(Q9の内容)がCQAの特定に有用です。デザインスペースは工程パラメータとCQAsの関係を多変量的に表すもので、リスクアセスメント(品質リスクマネジメントの一部)で特定した要素のCQAへの影響を調べることで生み出されます。申請時にはデザインスペースの記載として要素の幅と要素とCQAの関係式で示します。デザインスペースではCQAは多変量的に示されますので、多変量解析を用いたモデルを必要とします。製造の履歴などからデザインスペースを作ることもできるようです。連続工程においてもデザインスペースは適用可能で、連続工程でのデザインスペースはより柔軟な製造制御を可能とします。デザインスペースは小スケールやパイロットスケールでデザインしてもよいこととされていますが、スケール差の影響については検証・説明・リスク検証が必要です。異なるスケール間で同一のデザインスペースを使用する場合には、スケールとは独立のパラメータをCQA決定の要素として使用します。デザインスペースでは許容可能な品質を達成する要素の領域を設定しますが、領域には許容可能・不可能の境目が存在します。境界の設定は品質の受け入れにとって重要ですが、このガイドラインでは説明を与えないようです。