ICH Q3D 無機不純物

ICH Q3Dは無機不純物についてのガイドラインです。無機不純物は合成の触媒や容器に由来し、残留溶媒と同様に治療的意味を持たないため、できるだけ取り除きます。基本的にはPermitted Daily Exposure (PDE)に従った規格設定を行う必要があります。Q3DはQ9の制定後に制定されたガイドラインだと思われ、Q9(リスクマネジメント)の要素を含んでいます。

ガイドラインの対象は未承認の新規有効成分とそれを利用した製剤です。精製タンパク質、ポリペプチドは対象に含みますが、生薬・放射性医薬品・ワクチン・血液製剤・細胞抽出物・遺伝子治療薬等は含みません。無機物質自体が治療効果を保つ場合も対象から除きます。

有効成分の投与経路により、必要とされる安全性は異なります。どの経路においてもPDEが規格設定の基準となります。PDEが不明な物質に関してはパラジウムと同等として扱います。PDEは有害性の検証報告、文献から決定されており、医薬品に含まれた場合の酸化度・ヒトでの暴露・Safety dataの情報・動物実験・投与経路・投与終了時点などがPDE決定の際に考慮されます。

経口剤と吸入剤ではPDEの基準は異なり、吸入剤のPDEは吸入時安全性情報から作成することが推奨されています。情報がない場合には、経口時のPDEから算出する方法が設定されています。特殊な投与経路を用いる場合でも、基本的には経口時のPDEを基準として規格を決定します。どのような投与経路においても、バイオアベイラビリティについて考慮し規格設定します。

特定の場合(間欠投与、短期投与、致命的な症状に対応するとき、患者数が著しく少ない場合)には、PDEを超える不純物を許容される場合もあります。許容には正当化が必要で、バイオアベイラビリティ・体内濃度の半減期・投与期間などを考慮し正当化します。

非経口剤(主に輸液だと思われる)の有害性については一日投与量が2Lを超えるかどうかで判断します。2L以下なら最大一日投与量が規格を超えないこと、2L以上なら2L投与時に規格を超えないことを基準とします。

無機元素は残留溶媒と同様に、その毒性によりクラス分けされています。ヒ素カドミウム・水銀・鉛はクラス1に設定されており、最も毒性の強い無機元素とされています。クラス1の元素は基本的に製造に使用することができません。クラス2は投与経路によっては毒性をもつ元素で、医薬品への混入可能性により2Aと2Bの2クラスに分類されています。クラス3は経口以外(主に吸入時)で毒性を持つ可能性のある元素です。クラス分類されていない元素についての規制事項は現地規制当局の決定にしたがいます。

不純物の制御にはリスクアセスメントを利用することが推奨されています。リスクアセスメントはQ9に記載されており、Q8、Q11も考慮に入れるべきとされています。リスクアセスメントに関しては品質リスクマネジメントを参照していただくと良いかと思います。

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