ICH M7 変異性不純物 1

ICH M7は変異性(変異原性)不純物に関するガイドラインです。化学合成医薬品に合成途中に混入しうる発がん性リスクのある不純物について考慮すべきことについて記載されています。主な対象となるのは、新規医薬品と合成経路の変更があった場合になります。変異原性不純物とは、DNAに直接ダメージを与えうる不純物を指します。発がん性は細菌での変異原性を調べる形で検証します。毒性の閾値はTD50(50%発がん性の薬物濃度)として評価します。通常発がん性は化学物質の構造から推定でき、アフラトキシン・N-ニトロゾ・アルキルアゾキシ基を含む場合は発がん性の可能性があるとされているようです。発がん性が100万人に1人以下であれば臨床でのリスク受容は可能であるとされていますが、発がん性評価は生涯の曝露量に対して計算する必要があります。発がん性が無視できない場合は、不純物量を制御する戦略を必要とします。有効成分や発がん性のない不純物が代謝された場合の代謝物の発がん性についても同様の検証が必要です。このガイドラインが制定される前に発売された市販製品は対象外であるとされていますが、変更時には変異原性不純物について検証を必要とするようです。

承認後変更において、合成原料・溶媒・中間体を変更する場合には発がん性検証が必要となります。変更により影響を受けない不純物を再評価する必要はありませんし、製造所や原料供給者の変更だけでは通常評価を必要としないとされています。ただし、有効成分の供給者を変更する場合には、製法の変更がないことを確認し、製法変更があれば検証の対象とします。臨床使用方法を変更する場合には、そのリスクに応じて検証します。致命的病状に対する使用においては、発がん性のリスクを許容する場合もあるようです。市販後製品において特に注意を必要とする状況では、このガイドラインの適用が必要となります。市販後の新規情報で発がん性の懸念が示唆される場合、Class1/2の変異原性不純物を含む場合などが注意を必要とする状況に当たるようです。新規の変異原性情報は常に収集し、注意を払います。