ICH Q1A 新規有効成分・製剤の安定性試験 用語(Glossary)

ICHのガイドラインにはGlossary(用語)が記載されている場合があります。ガイドライン上で用いられる用語について説明、定義している部分になります。

Accelerated testingは日本語で加速試験と呼ばれ、品質が悪化しやすい、高温多湿条件での安定性試験のことを指します。安定性試験ですので医薬品の経時的な化学的・物理的変化を調べるために実施され、通常環境での安定性と共に検証するため、普通は長期試験も合わせて実施されます。短期間の保管条件の変化(輸送など)の影響を検証を目的とする場合もあります。

Brancketingは特定のサンプルのみを対象とする試験のデザインのことです。省略型の安定性試験の方法で、因子が極端なサンプル(一番コンテナの用量が多い・少ないなど)のみを検証します。中間的な因子を持つサンプルの結果は極端なサンプルの結果から推定できるとする試験です。コンテナサイズ、内容量などが異なる同じ製品に使用可能です。BrancketingとMatrixingについては別のガイドライン(Q1D)で説明されています。

Climatic zonesとは気候区分のことで、Q1Aの対象はZone IとZone II(温帯の平均気温)です。Zone IIIとZone IV(高温乾燥、高温多湿)環境での安定性試験はQ1Fに述べられています(Q1FはWHOのガイドラインを引用している)。

Commitment batchesとは、安定性試験が承認後に完了する製造ロットのことです。承認申請時に3ロットの結果が完了していないときに、規制当局に安定性試験結果を事後報告することを約束しておくものです。

Container closure systemとは、医薬品品質を保護するための包装のことを指します。包装には1次、2次包装があり、1次は製剤に直接触れるもの、2次は1次包装の上から行うものであることが一般的です。2次包装にも医薬品品質の保護作用があることが望まれます。Packaging systemもContainer closure systemとほぼ同様の意味を持つ用語です。

Dosage formは医薬品の形態、剤形のことで、日局の製剤各条に書かれてあるものとほぼ同じです。製剤各条の項で述べたように、製剤では添加剤を使用することが多いです。

Drug product/substanceはそれぞれ医薬品の製剤、原薬(有効成分)のことです。Excipientは添加剤を指します。

Expiration date/Shelf lifeは有効期限を指す言葉です。Shelf lifeは製剤の品質が保証されている期間のこと、Expiration dateはShelf lifeに従って決められた、医薬品のラベルに表記される有効期限を指します。

Formal stability studiesとはリテスト期間・有効期限を決めるための安定性試験のことです。長期・中間的・加速試験を含み、初期の3ロット、もしくはCommitment batchesにおける試験を指します。

Impermeable/Semi-permeable containerは不透性・半不透容器のことです。Imermeableはガスや溶媒を通さない、ガラスアンプルやアルミシールされたもののことを指します。Semi-permeableはガス/溶媒の透過を防ぐが、通さないわけではないものを指します。溶媒は素材への浸透・吸収と素材からの放出により起こります。低密度ポリエチレン製のものが代表例です。

Long term/Intermediate test(長期・中間的試験)は長期試験/長期試験の加速試験の中間的条件での安定性試験のことを指します。長期試験でリテスト期間・有効期限を決定します。中間的試験は必要に応じて実施します。

Mass Balanceは有効成分と分解産物の合計値のことです。有効成分と分解産物の合計値は製造直後の100%の量に近づくはずです。100%以下の値が出た場合には試験を検証、分解産物の揮発を考慮する必要があります。

MatrixingはBrancketingと同じく、省略型の安定性試験の一タイプのことです。条件の組み合わせを全通り試し、その代わり繰り返し数を削るような試験のことです。

Mean kinetic temperatureは温度が上下しても同じ変化をもたらすことが期待される温度のことで、平均温度ではなく、分解反応速度を考慮した温度のことのようです。

New molecular entityは未承認の新規有効成分のことです。ICHのどの地域においても承認を受けておらず、安定性の既存情報を持たないもののことを指します。

Pilot scale/Primary/Production batchはロットサイズ、生産順を示すロットの呼称で、Pilot scaleは研究スケールと生産スケールの中間的な量での製造ロット、Primaryは初めの生産ロット、Productionは生産スケールでのロットのことを指します。

Re-test date/periodは再試験により原薬の品質を担保できる期限、もしくは期限の日のことです。Re-test dateまでは初期の原薬試験によりその品質は担保されます。Re-test date前に再試験を実施し、規格内であれば引き続き原薬を製造に使用することができます。Re-test periodは長期試験から決定されます。生物学的製剤は一般的に不安定なので、厳密な有効期限の設定が必要となります。

Storage condition tolerancesとは安定性試験中に許容される温湿度の変化のことです。安定性試験中の環境は一定であることが求められます。したがって、その設備の温湿度環境は記録されます。設備のドアを開けたときには温湿度の変化は起こりますので、これは許容します。24時間許容範囲を外れた場合には、その影響を考察し、報告書に記載する必要があります。

Stress testingは原薬・製剤の変化について、比較的過酷な条件で試験を行うことを指します。原薬では分解産物について、製剤では光安定性、製剤物性などを検証します。

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