後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン 概要 1

後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインは、後発医薬品の承認申請に必要な、先発製剤との同等性を評価するために実施する臨床試験(BE試験)の方法について説明したものです。(1)では経口即放製製剤の同等性試験についてまとめています。ガイドラインは平成9年に発出されたもので、2020年3月に改正されました。先発製剤と後発製剤の間のバイオアベイラビリティ(有効成分の血中濃度)を比較し、同等であることを説明するための試験について述べられています。BE試験は製剤の剤形により試験方法が異なります。

経口即放製製剤のBE試験では、まず標準製剤(比較対象となる先発製剤)と試験製剤を選択します。標準製剤は3ロットの溶出試験を実施した結果、中間の溶出性を持つロットを選択します。ただし、3ロットとも15分時点での溶出率が平均85%を超えるようなら、どのロットを選んでも問題ありません。通常の溶出試験を適用しない場合には、溶出性・放出性が中間のものを選びます。溶出試験の試験液は規格の液、もしくは溶出性から選択します。溶出性から選択する場合には、①いずれの液でも最低でも平均85%以上の溶出を示すのであれば最も溶出が遅い液、②いずれの液でも平均85%以下の溶出を示す場合は最も溶出が速い液を選択します。試験は50回転のパドル法、ベッセル数は6以上で行います。試験製剤は実生産ロットと同じ製法で、実生産の1/10以上のスケールで製造した後発製剤を用います。主薬が均一に溶解した溶液である製剤では、ロットサイズの制約はありません。含量は標準製剤との差が5%以内であることが望ましいとされています。

生物学的同等性試験についての記載は試験法・評価法の2つの項目に分けた形になっています。後発医薬品のBE試験は原則としてクロスオーバー法(被験者の半数をそれぞれ先発・後発製剤に割り付け適用し、期間をおいた後に先発・後発を入れ替え適用する方法)を取ります。先発・後発の適用間に有効成分が完全に消失しない場合は平行群間比較試験法(先発・後発のみ割り付ける方法)を採ってもよいとされています。例数は検証に十分な数で行うこととされています(普通は検出力が0.8になるよう設定すると思われます)。クリアランスの個体内変動が大きく、例数が多くなる場合には多回投与試験や安定同位体の同時投与が有効だとされています。試験の被検者には健康成人志願者を用います。溶出試験で先発製剤と著しい差がある場合にはその医薬品の適用集団を被験者とします。先発製剤との間にpH6.8での溶出性に特異的に著しい差が見られる場合には、低胃酸の被検者での試験を実施します。投与量は1投与単位、もしくは臨床上の用量で実施し、投与法は単回投与が基本となります。用法として繰り返し投与するものに関しては多回投与を行います。単回投与では絶食と食後投与の2条件で行い、多回投与は基本的に絶食投与で行います。

生物学的同等性の試験では、原則として血液中の薬物量を測定します。尿を採取体液とすることもあるようです。採取回数は7点以上で、AUCt(血中濃度の時間積分値)とCmax(血中の最大濃度)を評価するのに十分な回数採取を行います。同等性はCmax、AUCで評価し、評価する対象は原則として有効成分の未変化体とします。有効成分が血中から消失するために十分な期間の休薬期間を設けますが、この際の期間は有効成分の消失半減期の5倍以上となります。同等性の許容域は、試験製剤・標準製剤の平均値の比が0.80-1.25の時同等とします(平均値が対数正規分布を取ると仮定するため、やや上の裾が長くなります)。同等性評価は90%信頼区間で行います。