ICH E14 QT間隔延長の評価 1

ICH E14はQT間隔延長の評価についてのガイドラインです。不整脈の治療薬を除く医薬品に適用されます。QT間隔は心電図のQ波からT波までの間隔を指し、心臓の脱分極の遅れを反映します。QT間隔延長は致命的な不整脈心室細動の原因となります。QTやQTを心拍数で補正したもの(QTc)について、医薬品による副作用の影響を調べ、承認前に評価しておく必要があります。ガイドラインの対象は全身循環する、不整脈の治療薬を除く新規有効成分で、部分投与/吸収の医薬品は対象外となります。剤形変更が血中濃度を増加させる場合には、剤形変更においても検証を必要とします。

臨床研究では、開発初期に健康成人でのQT間隔評価を実施します。通常時のQTが長い被験者や、不整脈リスクを持つ被験者を避け、QT延長効果をすでに服用している被験者も除外します。開発後期にはより広い患者群で検証を行います。QT間隔が500ms以上となる場合、もしくは60ms増加した場合には不整脈のリスクがあるため、被験者の参加を中断することになります。中断の閾値は患者群に応じて決定します。

徹底的なQT研究(Thorough QT study)は、健康成人で開発の初期に実施する、小さなQT延長を検出する研究を指します。5msの延長や95%信頼区間上限が10msになる場合をQT延長として認めます。この研究の結果から、よりリスクの大きな患者での使用を担保し、場合によってはより詳細な検証に移行していきます。徹底的なQT研究はプラセボ対照、二重盲検、ランダム化の元で実施し、QT延長の陽性対照を準備して行います。検証は並行群間試験法もしくはクロスオーバー法で行い、変動要因(日周性や活動レベルなど)の影響をできるだけ排除して評価できるようにします。用量応答性や投与後の時間変化についても検証します。心電図測定のタイミングは薬物動態データに従い決定します。排出が早く、代謝物が残らなければ単回投与で検証します。投与間隔のすべての期間での心電図を検証します。結果として、QT延長が5msに達しない場合、もしくは上側95%信頼区間が10ms以下の場合にはほぼ不整脈リスクを無視できるとされています。この値以上であれば陽性として、不整脈のリスクがあると評価します。