ICH S7B QT間隔延長の評価 2

ICH S7Bは安全性薬理学(Safety Pharmacology)研究の中の、QT間隔延長に関する評価についてのガイドラインです。2では研究の戦略についてまとめています。

非臨床でのQT延長の評価は6段階で実施するとされています。6段階とは、in vitroでのIkr測定、in vivoでのQT測定、化学・薬理学的性質の評価、非臨床・臨床結果からの情報、フォローアップ研究、リスクアセスメントです。Ikrとは、再分極遅延に関与するKのイオンチャネル活性の測定を指します。自然発現、もしくは形質転換などで発現を誘導したKチャネルによるKの流量をin vitroで測定します。主なターゲットとして、hERGというタンパクがあげられています。

in vivoでのQT測定は、その名の通り動物を用いた心電図でのQT間隔の延長測定を指します。動物の使用は減らすよう記載されています。化学・薬理学的性質の検証では、有効成分と類似した物質にQT延長を引き起こすものがあるかどうかを調べておきます。このような物質は対照となる物質の選択、リスクアセスメントに影響します。非臨床・臨床での結果もQT延長のリスクを評価するために重要な情報となります。非臨床・臨床結果では、薬力学・毒性・動態・薬物間相互作用・組織分布・組織への蓄積の他、承認販売後の調査から得られた情報もリスク評価に用います。

上記の研究、サーベイからQT間隔延長のリスクが懸念される場合には追加研究(フォローアップ)を実施します。フォローアップ研究は特定の問題を検証するためのin vivo/vitroでの試験を指し、臨床と非臨床で矛盾した結果が得られた場合などに実施します。再分極・心電図の変化を多回投与試験や、代謝物の投与により検証します。

フォローアップ研究を含めたすべての結果を検証し、リスク評価を実施します。リスク評価では、各検証の検出力、特異性、対照との比較、再分極の影響と治療効果の比較、代謝物によるQT間隔への影響などを検証します。リスク評価の結果、リスクを明確にし、ヒトでの臨床投与に備えます。

QT間隔延長の評価における実験系では、測定方法、エンドポイントの妥当性、方法の標準化、結果の再現性、ヒトでのリスク評価を行うのに必要十分であることを考慮し、系を構築します。実験系では適切な対照を準備し、陽性対照(QT間隔延長を引き起こす条件の対照)を必要とします。QT間隔延長の研究として、in vitroでの電気生理学的研究を実施することもあるようです。電気生理学的研究は単細胞、複数細胞の系を用い、Na、Ca、Kの細胞への流入・流出を測定します。同様にin vivoでの電気生理学的研究を実施する場合もあります。小さすぎる動物(ラット、マウス)は使用に適さないようで、比較的大きい動物を使用した研究となるようです。