ICH E4 用量応答性研究

ICH E4は用量応答性の検証に関するガイドラインです。用量応答性研究において考慮すべきこと、研究の方法について記載されています。用量応答性研究では効果を示す最小の用量、安全な最大の用量を特定し、用量応答性研究から最適な用量を決定することを目的として実施されます。用量は効能と安全性のバランスが取れたものを選択します。用量応答性研究では安全性の高い低用量から実施することが推奨されます。最適な用量は薬力学・薬物動態・個体差などに依存して決定されます。初回投与時の用量選択はリスク-便益評価から決定しますが、この評価結果は規制当局や開発元により異なってきます。

研究では個体差の影響を明らかにするため、個々の患者で用量応答性の結果を取ることが望ましいとされています(が、通常は投与量と投与期間が長くなるため実施されないと思われます)。効能には血中濃度が重要な要素となるため、動態研究などから得られた血中濃度の情報と用量の関係、血中濃度と効能の関係を利用して用量研究を実施することもできるようです。用量応答性研究では、徐々に用量を増加させる方法(Titration、滴定的研究)が用いられることもありますが、Titrationでは用量と投与期間の効果を分離できず、バイアスが生じる恐れがあります。被験者数が少なくなるため、初期研究で用いられることが多いとされています。Titrationに限らず、血中濃度半減期が長いものでは投与期間と用量の相互作用が生じやすくなるため、注意が必要となります。用量応答性研究は開発パッケージnの一部として実施することで被験者数、時間、労力を抑えることができるとされています。研究デザインが優れている場合においても、用量が少なすぎる・多すぎるために応答が見えない場合もあります。必要に応じて承認後に適切な用量を決定するための研究を実施する場合もあるようです。用量研究だけでなく、研究全体のデータから適正用量の情報を得ることも重要となります。

用量応答性の研究デザインの選択は病状や開発ステージにより異なります。最も適しているとされているのは、並行群間用量応答研究です。プラセボを含んだ検証を行い、個々の被験者はある一定用量の投与を受けます。クロスオーバーデザインは血中濃度の消失時間が速いものでは有用で、被験者数は少なくなります。ただし、個々の被験者の暴露期間は長くなり、持ち込み効果が起こる場合もあります。TitrationにはForced Titration(全被験者が同用量まで用量を増加させる方法)とOptional Titration(応答が見られるまで用量を増加させる方法)の2種があります。どちらにおいても用量と投与期間の影響を分離できない問題があります。後者ではデータの欠損などが起こりますが、現在では統計的手法を用いることで適切な評価を下すことができるとされています。