ICH E9 臨床研究における統計解析の原則 2

ICH E9は臨床研究における統計解析の原則に関するガイドラインです。2では治験のデザインについてまとめています。

治験では、実施する上で発生するバイアスをできるだけ低減することが必要となります。バイアス低減の最も重要な要素は盲検とランダム化です。特に承認申請時に提出する臨床データでは二重盲検、ランダム化が基本となります。被験者の除外や中止、計画書からの逸脱もバイアスの原因となりえます。盲検では、処置の内容を知ることで起こるバイアスを排除します。通常は患者も治験責任医師・治験に関わる従事者の処置の内容を知らない、二重盲検が用いられます。単盲検やオープンラベルの研究も探索的研究段階では行われることがありますが、いずれにおいても処置を知ることによるバイアスへの注意が必要となります。盲検は治験完了まで維持し、患者の治療上必要不可欠な場合のみ盲検解除が行われることがあります。ランダム化は患者をランダムに治療に割当することで、予後の予測が立つ状態での意図的な患者の割当を防ぐことを目的として行われます。ブロックごと(クロスオーバーの患者群など)に患者をランダム化すると良いとされています。多施設での治験では、中央集権的に(治験センターのようなところを作って、治験全体を管理するようなことを指しているようです)ランダム化を実施します。患者群の層別化を伴う場合もあるようです(Dynamic Allocation、動的割付)。盲検と同様に、ランダム化の状態も治験中には開示しません。

治験のデザインとして、最も基本的なものが並行群間デザインとなります。患者を複数の処理に割付する研究となります。クロスオーバーは1患者に異なる複数の処理を行う方法です。クロスオーバーでは被験者数が少なく、検出力が高くなりますが、前の処理からの持ち込み効果が発生する可能性があります。患者の処置の中止、AEの解釈が困難になりやすいようです(前の処置・今の処置のどちらが原因となったのか判別しにくい場合があるためだと思われます)。Factorial Designs(要員計画)は2つ以上の処理を患者に割付する方法です。配合剤などの用量応答性研究で用いられるようです。Multicentre Trials(多施設臨床研究)は2つ以上の施設で実施される研究で、限られた時間で十分な被験者数を確保する必要があるときに実施されます。施設が多いことで研究対象となる被験者が一般化されているという特徴があります。多施設臨床研究では、施設間で同等の処置、評価ができるよう、手順を整備します。施設間に治療効果のばらつきがある場合があるため、施設間差の統計的な説明が必要となります。