ICH E9 臨床研究における統計解析の原則 1

ICH E9は臨床研究における統計解析の原則に関するガイドラインです。1では研究のタイプと評価項目についてまとめています。

このガイドラインには、臨床研究実施時の統計の諸問題に関する内容が記載されています。統計解析に関してはスポンサーが責任を負い、統計手法はあらかじめ計画書に記載しておく必要があります。このガイドラインの内容は開発のすべての段階に適用されます。臨床研究における統計では、バイアスを最小化し、正確性を最大にすることが求められます。統計手法や例数(サンプル数)の設計では、統計的な頑強性を示すのが重要となります。臨床研究における統計は通常確率論的統計(普通の統計学)を用い、確率論的統計以外の方法(ベイズ統計など)を用いる場合には説明を必要とします。

臨床開発では、個々の研究の目標達成と共に、開発全体での目標達成が必要となります。全体の目標達成のため、目標や達成基準、意思決定方法、計画の柔軟性などを考慮し、個々の研究の結果が開発全体の目標達成に寄与できるようにします。

研究には検証的なもの(仮説を検証するタイプの研究)と探索的研究の2つがあります。前者が効能や安全性の確証には必要となります。検証的研究では効果のサイズと研究結果の有意性を示すことが必要となります。検証項目や仮説はあらかじめ計画書に記載し、変更をできる限り避けます。個々の研究での検証項目は多すぎないようにします。

研究の初期においては、患者群の選択方法が研究のアウトプットに大きな影響を与えます。検証的研究ではより一般的な患者を選択するよう、適切な除外基準を設け、患者群を適切に定義します。

研究のアウトプットとして測定するパラメータには、主要なもの(Primary variables、主要評価項目)と副次的なもの(Secondary variables、副次評価項目)があります。主要評価項目はその研究において効能・安全性を示す最も大事なパラメータとなります。評価項目はすでに効能や安全性を説明できることが明らかにされている、堅牢な評価の指標である必要があり、堅牢性についての説明を計画書に記載します。主要評価項目の変更は盲検解除後には認められません。副次項目についても適切な設定と説明を必要とします。複合的評価項目は複数の評価項目を定められたアルゴリズムを用いて1つにの評価項目とすることを指します。多重比較の問題を含むことがあるため、第一の過誤の調整が必要となる場合があります。計画書で複合的評価項目を定義します。Global Assessment Variablesは治療全体の安全性や効能を示すために用いられる評価項目で、主観的項目などを含むカテゴリごとの順位付けなどが用いられます。Multiple Primary Variableとして、複数の主要評価項目を設定する場合もあります。直接的な効能評価が難しい場合には、臨床での便益を反映するとされる代用評価項目(Surrogate Variables)を用いる場合もあるようです。連続的な値を不連続値(〇〇以上なら効果あり、〇〇以下なら効果なし など)に変換して評価する、Categorized Variablesというものが設定される場合もあります。