ICH S5 生殖・発生毒性の検出 4

ICH S5は非臨床研究における生殖・発生毒性研究(DART: Developmental and Reproductive toxicity)についてのガイドラインです。4では用量・投与経路・投与期間についてまとめています。

用量・投与経路・投与期間は実験系を構築する上での重要な要素です。薬理活性、動態、毒性、用量決定研究を参考に各要素を決定します。用量の設定についてはM3、S6(生物学的製剤)に記載されており、十分な情報がなければ用量範囲を決定する研究を行うことが推奨されています。

用量の決定法には、毒性研究に基づくもの、全身曝露の飽和に基づくもの、暴露マージンに基づくもの、実行可能な最大用量(MFD、Maximum Feasible Dose)、制限用量の5種があげられています。毒性研究によるものを選択する場合には、毒性を引き起こさない最大用量を用います。全身曝露の飽和は、投与量を増加させても血中濃度が上がらなくなる投与量を用いる場合を指します。暴露マージンとは、ヒトでの予定最大用量に余裕(マージン)をもたせたもので、ヒト最大用量の25倍程度を用いるのが一般的とされています。実行可能な最大用量は物理的・生理学的に最大の量を投与する方法とされています。決定方法はM3のQ&Aに記載とされています。制限用量とは、1g/kg/dayを基準として用量を設定することを指します。他の方法での用量決定ができないときに使用されるようです。より低用量での検証を実施する場合もあるようです。低用量を用いる場合にはヒトでの一日最大用量の1-5倍を使用するとされています。

投与経路は基本的にはヒトでの臨床使用と同じものを使用します。十分な暴露を満たせない場合(おそらくバイオアベイラビリティが低くて血中濃度が高くならないときなどを指すと思われます)には、他の経路(普通は注射)を使用することも可能です。十分な暴露での検証を行うことで、より暴露の低い投与経路での毒性を担保できると考えてよさそうです。

投与のスケジュールも暴露の状況を決定する重要な因子です。投与のスケジュールは基本的に臨床使用を模倣する形で実施します。頻度が高いときには動物のストレス(精神的なものではなく、物理的なもの)を考慮する必要があります。

ワクチンの毒性研究では、ワクチンの使用状況と対象を考慮し、用量・研究デザインを決定します。ワクチンの使用対象が出産可能性のない集団であれば、DARTは必要ないとされています。検証時にはヒトでの最大用量で、臨床と同じ投与経路を用いて実施し、母体の抗体価が最大となる条件での検証を行います。胚・胎児発生時に1用量での試験を実施するとされています。