ICH S6 生物学的製剤 Part2: 前臨床での安全性評価 追補1

ICH S6は生物学的製剤の臨床前安全性評価についてのガイドラインです。Part2にはPart1への追加事項について記載されています。Part2は科学的進展に伴いS6のアップデートの必要性が生じたため作成されたとされています。動物の使用を減らしつつ臨床前安全性を確保し、開発リソースを減らし、安全で倫理的な医薬品の開発を推進することがこのガイドラインの目的となっています。

動物種の選択では、生物学的製剤の遺伝子配列(DNAシークエンス)を調べ、類似性のある受容体やリガンドをものを持つ動物種の選択を検討します。類似性の高い受容体やリガンドを持つ動物では、その生物学的製剤が機能する確率が高くなります。培養細胞でのin vitro検証や、機能・結合能を基にした動物種の選択を検討します。Part1に記載したことと同様に、類似性の高い受容体やリガンドを持つ動物種が存在しない場合には、形質転換体(遺伝子組み換え動物)の使用を検討します。

体外の抗原を対象とする抗体製剤(ウイルスや外的アレルゲンなどに対応する抗体を指すと思われます)では、動物1種での短期の安全性研究を実施します。病状を示す動物での抗原に依存した安全性を評価します。抗体-有効成分複合体(ADCと呼ばれるもののようです。https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17193/)における安全性の検討においても同様の検討を実施します。

有効成分の薬理活性が見られる種が2種あれば2種での短期的検証、2種共に同じ応答を示した場合には1種で長期の検証を行います。通常はげっ歯類を用い、薬理活性が見られる種が1種しかなければ1種で毒性を検証します。

薬理活性を示す動物がいない場合には、相同性のタンパクの使用も検討します。有効成分そのものではないため、定量的なリスクの検証はできません。用量や系を科学的に正当化した上で相同性タンパクを使用した検証を実施します。

毒性は薬理学的効果と関連しているため、用量応答性、PK-PDの結果から用量を決定します。通常は臨床最大用量の10倍を検討し、ヒトでの臨床使用時の安全性マージンを十分に確保します。受容体親和性が低い(薬理活性が弱い)場合には、高用量を使用した動物研究を検討します。

研究の期間については、長期使用する医薬品に関しては6ヶ月の多回投与研究で毒性を検証します。毒性の研究と合わせて、毒性・危害からの回復過程を検証します。最低1用量、1研究での実施が求められます。完全な回復は使用の条件などにより必要性が異なります。