日本薬局方-一般試験法 2.64 糖鎖試験法

糖鎖試験法における糖鎖とは、糖タンパクとしてタンパク質に結合している糖鎖を指します。糖鎖はアスパラギンに結合するN-結合型とセリン/トレオニン(音はスレオニンに近いと思うのですが、日局ではトレオニンと記載)に結合するO-結合型があります。タンパク質に結合した糖鎖はその構造の安定化、分解の抑制、生理活性の調節、細胞への取り込み、免疫耐性などに寄与します。糖鎖試験法の対象になるものは、主に遺伝子組み換え技術を用いた組み換えタンパク質製剤になります。遺伝子組み換えタンパク質製剤では、糖鎖結合の数、構造、場所が変化することが考えられます。糖鎖は分解、安定化、細胞取り込みなどに寄与するため、糖鎖が変化すると有効性・安全性に影響がでる可能性があります。したがって、このような製剤では糖鎖が確実に同じ位置に同じ構造で結合していることを確認する必要があります。

糖鎖を構成する単糖の種類は限られています。種類はいくつかありますが、アミノ糖、中性糖、シアル酸などに分類されます。糖タンパク質ではこれらの糖が直鎖や分岐を作り、特定のアミノ酸に結合しています。

糖鎖の分析法は4種類存在します。単糖分析は糖鎖を単糖まで分解し、単糖の校正と量を測定する方法です。普通は酸加水分解で分解しますが、シアル酸は不安定なので緩和な分解方法が必要となります。単糖まで分解した後にHPLCで単糖の種類と量を特定します。オリゴ糖分析は遊離の糖鎖として分析する方法です。タンパク質から糖鎖をまるごと分離し、その糖鎖をHPLC電気泳動、MSなどで分析します。糖ペプチド分析はアミノ酸鎖と糖鎖が結合したまま分析する方法です。ペプチドを消化酵素(エンドペプチダーゼ)で分解し、タンパク質をペプチドに分解します。このペプチドには糖鎖が付いたままなので、糖鎖の付いたペプチドと付いていないペプチドが分解産物として得られます。このペプチドをHPLC/MSで分析します。糖タンパク質のグリコフォーム分析はタンパク質を分解せず、立体構造を崩して調べる方法です。分離にクロマトグラフィー、キャピラリーゲル電気泳動、SDS-PAGEなどをもちいて、タンパク質そのものを分離します。タンパク質の量や移動量からタンパク質の状態を調べます。タンパク質の分析にはMSを利用することもあります。