日本薬局方ー一般試験法_2.63_誘導結合プラズマ発行分光光度法及び誘導結合プラズマ質量分析法

誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma, ICP)とは、高温のアルゴンプラズマにより試料を励起する方法のことです。プラズマ中に試料を噴霧することで、試料中の原子を励起します。励起した試料の原子発光を測定、もしくは励起をイオン化としてMSに利用することで、物質の特定や定量に用います。

アルゴンプラズマは高周波誘導コイルによる電界を発生させ、その電界中でアルゴンに放電することで生成します。プラズマの生成装置はプラズマトーチと呼ばれ、プラズマは超高温になります。プラズマトーチ中に試料をスプレーすることで試料の励起を行います。試料の励起とは、具体的には電子の励起を指します。プラズマにより、原子中の電子が高エネルギーに励起されます。励起エネルギーは熱と光となり発散され、基底状態に戻ります。このときの光を測定するのが原子発光光度法、励起原子自体を使うのがICP-MSです。

ICP発光分光光度法は、上記のエネルギーの発散にともなう発光を測定するものです。この発光の波長が原子に固有のものとなるため、分光計で発光の波長と強さを測定することで原子を特定、定量することができます。ICP-MS質量分析法のイオン化部としてICPを利用する方法です。感度が高く、同位体も分離検出できるのが特徴です。

ICP発光分光光度計は励起源部、試料導入部、発光部、分光部、測光部からなります。発光部がプラズマトーチを指し、分光部以降は分光吸光光度法と似た仕組みとなります。ICP-MSはイオン化部がプラズマトーチに置き換わったものです。イオンを収束させるためのイオンレンズを持ちます。質量分離部としては4重極型が一般的なようです。

ICPの試料は基本的に原子です。高温プラズマに晒すため、有機物をそのまま導入してしまうと燃えてしまいます。有機物を導入する場合にはあらかじめ灰化しておく必要があります。有機溶媒中の炭素を除くため、プラズマトーチに酸素を導入することもあるようです。

分光計は規定の元素で校正し、条件を最適化します。ICP発光分光光度法では干渉と呼ばれる現象が起こります。この干渉は回折の干渉のようなものではなく、噴霧状態のような物理的な状態、イオン化効率、発光スペクトルの重なりなどを指します。ICP-MSも最適化が必要で、干渉も生じます。ICP-MSの干渉も分光光度法と同じく、スペクトルの重なりなどを指します。分光法、MS共に測定前のシステム再現性の確認が必要です。分析方法には元素を特定する定性的なもの、元素と量を測定する定量的なものがあります。