GMP省令-照査

照査とは、その製造所で製造している各製品について、製造の状況、試験の状況、薬事対応の状況などを定期的に確認し、問題があれば改善することを指します。照査では、① 工程管理・品質管理の結果を統計的に解析し、② 変更・逸脱・品質情報・回収の履歴をまとめ、③ 安定性試験の実施状況をまとめ、④ 設備・施設の整備状況をまとめます。この4つを定期的に行うことで、その期間に製造された製品の品質を見直し、分析します。

医薬品の製造では、製造中・試験中に工程管理値(製造)、試験結果(品質管理)を記録する必要があります。ココで言う工程管理値とは、製品の水分量、密度、重さなどで、試験結果とは主薬の量、不純物の量、溶けやすさなどを指します。一般的に工程管理値・試験結果はデータベース等に記録され、その経過をトレースすることができるようになっています(企業によってはなっていないことがあるかもしれませんが…)。

照査では、工程管理値・試験結果を統計的に解析する必要があります。統計は単にグラフにすることを指すわけではないのですが、そのデータがどのように変動・変化しているのか調べるために、まずグラフを作ってみることが有効です。グラフにして平均値、規格値との関係を調べます。更に、品質管理では工程管理値というものを考慮する場合が多いようです。このスライドでは工程管理値としてUCLとLCLを説明します(UCLはUpper Control Limit、LCLはLower Control Limitの略)。UCLとLCLは平均値プラスマイナス標準偏差の3倍、という値で計算できるものです。このプラスマイナス標準偏差の三倍には、データのほとんど(99.7%程度)が含まれます。UCLとLCL、データの傾向、規格値との差などを配慮して、製品品質がどのように推移しているのか調べます。(統計については別途資料を作る予定です)

製造方法などの変更は製品の品質の変化を起こす原因となります。一方、逸脱・品質情報・回収は製品品質の状態を反映する重要な情報となります。これらについて情報をまとめることで、照査が行われた時期の製品品質について分析することができます。特に、上に述べた統計解析との関係を利用することで、どの変更がどの工程管理値の変化に効いているのか、逸脱や品質情報の後の改善で製品品質がどの程度改善されたのか理解することができます。

照査では、医薬品の安定性試験の実施状況をまとめます。医薬品に用いられている主薬(原薬、API)は複雑な化学構造を持つ物質で、多くの場合不安定です。この主薬に光が当たったり、湿気がついたりすると、主薬は分解され、別の物質(不純物)が増えることがあります。不純物には色がついていることも少なくないため、長く保存した医薬品の色はしばしば変色します。この安定性の問題を確認するため、医薬品を長期保管し、保管後の品質を調べる安定性試験が実施されています。この安定性試験の実施状況を照査ではまとめます。安定性試験は、① 定期的に、② 新製品の初回製造時(予測的バリデーション時)、③ 製法変更時(変更時の再バリデーション時)に主に実施されます。

照査では、製造に使用する設備や施設の管理状況についてもまとめます。これらの4つの状況を照査により定期的に確認することで、製品品質の変化を見逃さないようにし、変化が起きている場合には対処することで医薬品の品質は維持されます。