固形経口製剤の製造: 印刷と選別

印刷と選別は錠剤の識別性を高め、外観異常を取り除くために行われる工程です。

錠剤の印刷では、錠剤に直接表示を加えます。印刷技術の発達以前は刻印を用いることが一般的でした。しかし、打錠や皮膜の問題が起こりやすいこと、視認性が良くないこと、文字数が少なくなることから刻印は避けられるようになり、印刷が主流となっています。錠剤には製品名や用量が表示されます。選別は外観不良錠を選り分け、取り除く工程です。割れや欠け、異物を含む錠剤などを取り除きます。通常包装の前に実施され、機械選別後に人の目視で確認することが多い工程です。

錠剤印刷にはオフセット、インクジェット、レーザーの3種類があります。オフセット印刷hあ、ローラーに刻まれた溝にインクを埋め、ローラーを錠剤に押し付けることでインクを錠剤に転写します。ローラーを錠剤に押し付ける際に汚れがつきやすく、印刷のデザインごとにローラーが必要となります。現在では後述するインクジェットに置き換えが進んでいます。

インクジェットはPCのインクジェットプリンタと同じく、インクを錠剤に吹き付ける方法です。インクには可食性の専用顔料を必要とします。インクが飛んで錠剤の汚れとなることがありますが、オフセットよりはきれいに印刷できます。印刷デザインはPC等で作成し、ファイルとして機器に登録します。

レーザー印刷はレーザーを用いて、錠剤を黒く変色させる方法です。変色は二酸化チタンの酸素に欠落を起こすことで起こるため、安全性の高いものとなります。二酸化チタンの欠落を利用するため、二酸化チタンを用いた皮膜錠のみが印刷の対象となります。インクによる汚れは発生せず、顔料も必要がないという特徴があります。

印刷においても選別においても、錠剤の輸送システムが重要となります。錠剤の表裏を揃え、列を形成して輸送することで個々の錠剤の印刷や選別が可能となります。輸送システムには通常回転するドラムが用いられ、ドラムに錠剤を吸い付けることで錠剤を並べ、輸送することを可能としています。錠剤をうまく並べ、吸い付けるためには錠剤の形状やサイズに合わせたドラムが必要となります。

選別では、錠剤をカメラ等で撮影し、錠剤の形状や汚れ、異物などを検出し、不良錠を除きます。錠剤の両面をチェックする必要があるため、両面を調べるための輸送路(ドラム)やカメラを持ちます。同様の選別機能は印刷機にも備わっていますが、選別は印刷とは別途実施する場合が多いと思われます。

固形経口製剤の製造: 包装

包装は錠剤をブリスターやボトルに詰め、箱詰めし、ラベルや添付文書を添える工程です。錠剤を包装することで、光や酸素などが有効成分に与える悪影響を減らし、安定性を高める効果があります。

包装のうち、錠剤をプラスチックとアルミ箔で包む方法のことをブリスター(PTP: Push Through Package)と呼びます。薬局やドラッグストアで販売されている多くの錠剤はブリスターで提供されています。ブリスター包装では、まずプラスチック素材を金型で加熱・成形し、錠剤を投入するポケットを作ります。ポケットに錠剤を入れた後、アルミフィルムをプラスチックに重ね、加熱圧着することで包装します。プラスチックフィルムとしては塩化ビニルやポリプロピレンなどが用いられます。素材や製品によってその防湿性・遮光性・成形性が異なります。通常薄いほどフィルムは柔らかく、錠剤は取り出しやすくなりますが、防湿性や遮光性は低くなる傾向にあります。製剤の安定性などの性質を考慮して素材を選択することになります。アルミニウムフィルムに関しても同様にその製品により透過性などが異なります。通常アルミの層と印刷層から成り、印刷層には製品名や企業名が印刷されていることが多くなっています。アルミをプラスチックと加熱圧着する際に裂けることがあるため、厚みと加熱圧着時の温度・圧力の調整が重要となります。

包装の表記や添付文書に関しては、薬機法52条の規定の通り表示・同封の義務があります。ブリスターやボトルを箱詰めする際に添付文書を添付し、箱にも情報を表記することが一般的です。包装まで完了した後、出荷試験が実施され、出荷試験の結果規格に適合していることを品質保証部門が承認した後に医薬品は製品として出荷されます。

固形経口製剤の製造: 打錠

固形経口製剤の製造のうち混合物を圧縮成形して錠剤の形とする工程である、打錠についてまとめています。通常は回転式打錠機という機械を用いて、2つの杵(上杵、下杵)と臼(上下に貫通した穴があり、上杵、下杵が上下から圧密するものです)を用いて圧縮成形します。錠剤の重量や有効成分の均一性などを決定する重要な工程となります。

回転式打錠機は杵や臼を回転させ、混合物を臼に供給しつつ圧密する機械です。1回転で40-70錠程度の錠剤を打錠し、回転盤は1分間に30-70回転程度回る仕組みになっています。錠剤重量や打錠時の圧力、圧密する粉体の量などを調製しつつ打錠することになります。

杵や臼は錠剤を圧縮成形するもので、臼で周縁の形状を、杵で表面の形状を決定し、上下の杵を上下から圧縮することで打錠します。杵には許容圧があり、許容圧の範囲内で打錠する圧力を決定します。

打錠では打錠障害と呼ばれる、品質に起こる問題が発生することがあります。この打錠障害のうち、スティッキングやバインディングは典型的なものの一つです。共に杵や臼に粉体が固着し、錠剤に固着した粉の型が残ります。打錠障害は杵臼の表面処理や滑沢剤混合の状態、打錠速度などによりその発生の割合が変化します。

打錠圧力は打錠杵を上下から押す圧力のことです。同じ杵、同じ厚みで錠剤を打つ場合、打錠圧力が大きくなると通常錠剤重量は多くなる傾向にあります。打錠圧力のばらつきは錠剤重量のばらつきを反映します。打錠圧力が高いと錠剤は固くなり、崩壊、溶解しにくくなります。

錠剤の質量は錠剤の処方を決定する重要な要素であり、医薬品製造販売承認書にも記載される重要なパラメータの一つです。錠剤質量に対する処方量が厳密に決められているため、打錠圧力などを調製し、規格に従った質量とすることが重要となります。錠剤の硬度も重要となり、硬度が低いと皮膜工程や包装・輸送時に欠けることになります。

固形経口製剤の製造: 混合

固形経口製剤の製造のうち、造粒物と他の原料を混ぜる工程である、混合についてまとめています。混合では、各種原料が均一となり、含量均一性を高めることが目的の一つとなります。通常は容器回転型の混合機を用います。容器の形態にはタンブラー、ダブルコーン、V型、コンテナブレンダー、ボーレコンテナミキサーなどと呼ばれる、少しずつ形態・特性が異なる混合機が存在します。製品により混合機を選択する、というのは設備投資的に通常できないため、所持している混合機の特性を理解し、混合時間などを調節することが重要となります。

混合では、通常圧縮成形性を高めるための賦形剤、錠剤の崩壊を促す崩壊剤などを加え、まず混合します。この混合では、原料が均一となるよう十分な時間かき混ぜます。賦形剤や崩壊剤の混合後、滑沢剤の混合を行います。滑沢剤としては通常ステアリン酸塩(特にステアリン酸マグネシウム)を用いるのが一般的です。このステアリン酸塩の混合では、混ざらなすぎると滑沢性が均一とならず次工程で問題となり、逆に混ぜすぎてもステアリン酸塩が分散しすぎ、滑沢性や錠剤の硬度が下がります。次工程での状態を見つつ、適切な混合時間設定を行う必要があります。

固形経口製剤の製造: 秤量

固形経口製剤の製造のうち、原料を処方通りに準備する段階である、秤量についてまとめています。秤量はその名の通り、処方量を医薬品の製造承認書に従い厳密に量りとる工程です。通常はMES(Manufacturing Execution System、製造実行システム)を利用して行います。

原料は通常購買部門が購入します。購入時にSAP(購買・会計管理システム)による処理を受け、工場内に持ち込む際にMESで処理することになります。原料は通常ダンボールやドラムなど、包装を持ち、包装には虫などが付着している可能性があります。原料を工場に持ち込む際に防虫・防鼠の措置を取りつつ、ダンボール等を取り除き、MESシステムに従い原料にラベルを行います。このラベルにより以降の秤量工程をMESで管理する形となります。

秤量前にはGMPに従い製造指図書が発行され、製造指図に従い原料を秤量することとなります。原料は適切に校正・保守された秤を用います。この際の秤は通常MESシステムと連動する形となり、原料の在庫や量り取り量をMESで管理することとなります。秤量時には交差汚染(コンタミネーション)に注意が必要となります。量り取った後、MESに秤量の結果を登録し、MESシステムが発行するラベルを秤量した原料に添付します。秤量は通常複数人で確認し、秤量物の混同等が起こらないようにします。秤量物は適切な環境の場所に保管します。特に有効成分は酸化・光・熱に弱いものを含む場合があるため、保管場所の環境条件が重要となります。保管においても交差汚染を起こさない環境を維持することが重要となります。

固形経口製剤の製造: 造粒

固形経口製剤の製造のうち、製造の最初の工程である造粒についてまとめています。固形経口製剤の原料となる有効成分は溶解性を高めるために通常細かい粉体となっています。有効成分のみだと細かすぎ、その後の工程での取り扱いが困難となるため、賦形剤や結合剤、水などを用いて、粉同士を結びつけ、粒とする工程が造粒です。粒としたあとには通常乾燥や、粒の大きさを揃える整粒の工程を含む場合が多くなります。造粒には水を使わないもの(乾式)や、そもそも造粒しない場合(直打や散剤)もあります。

GMPに規定されている製造指図に従い、処方どおりに秤量された原料を用い、製造工程が開始されます。湿式の造粒では、結合剤として水やエタノールに溶解・分散させたセルロース系の化合物を用いることが多いため、まず結合剤を溶媒に溶かす工程が入ります。結合剤を溶かした液(結合液)を用い、湿式の造粒である撹拌造粒、流動層造粒、押出造粒や、乾式造粒の工程に移ります。

撹拌造粒は粉体である原料と結合液をかき混ぜ、粒を成形する方法を指します。通常は粉に結合液を加え、練って、細切りにすることで粒とします。機械としてはバーティカルラニュレーターと呼ばれるようなものが代表的です。練って造粒するため、比較的密度の高い粒となります。撹拌造粒機には乾燥の機能はないので、通常別途乾燥工程が必要となります。

流動層造粒は粉体を下から送風で吹き上げ、吹き上がった粉体にスプレーで結合液をかけることで造粒する方法です。通常は高温の空気で吹き上げることで、造粒しつつ乾燥させる工程となります。スプレーを用いずに乾燥のみに用いる方法も一般的です。流動層造粒では比較的密度の低い、ポーラス(間隙の多い)粒体ができます。

押出造粒は粉体と結合液を混ぜ、網から押し出して粒にする方法です。網のサイズにより粒のサイズが決まります。押出造粒では粉体と結合液を強く練るため、非常に密度の高い粒ができる傾向にあります。造粒物は細粒剤や粒剤などに用いられる場合が比較的多くなります。

乾式造粒は粉体を圧縮して板状にし、板を粉砕することで粒とする方法です。粉砕時の網のサイズが粒のサイズを決定します。圧縮時の圧力により、粒の硬さを調整することができます。乾式造粒は水を使わないため、水に弱い有効成分でも使用でき、乾燥を必要としないことが特徴です。

湿式造粒では通常溶媒を使用し、製品には溶媒が含まれない状態にすることが一般的です。従って湿式造粒では溶媒を乾燥させる乾燥の工程が必要となります。流動層乾燥機を用いる乾燥が医薬品製造では最も一般的です。製剤により必要となる乾燥の度合いが異なるため、乾燥後の水分を最適とするよう乾燥の方法や時間を設定します。

造粒物は通常望ましいサイズより大きいため、粒のサイズをやや小さくするため、整粒機と呼ばれる粒の表面を削るような機械を用います。整粒機にかけたあと、粒のサイズを揃えるために通常ふるいにかけます。ふるいにかけ、粒のサイズが揃った造粒物が得られるとよいとされています。

固形経口製剤製造の基礎

固形経口製剤の製造について、基礎からまとめていきます。まずは製造の流れについて説明します。固形経口製剤は局方の製剤各条に記載されている製剤のうち、経口投与する固形のものを指します。多くの場合、有効成分と添加剤を混ぜ、様々な工程を経て錠剤、カプセル剤、粒剤のいずれかに加工、販売されます。

製剤製造の流れは剤形により異なりますが、概ね購買、入荷試験、秤量、造粒、混合、打錠、皮膜、包装、出荷試験などの工程を経て製造されます。これらのうち、入荷試験と出荷試験は品質部門の工程となります。

購買では原料を原料メーカーから購入します。購入した原料は品質部門による品質確認を受けます。原則として原料調達、在庫確保、購入交渉は購買部門のタスクですが、原料製造元の照査は品質部門のタスクになります。原料には有効成分の他、成形性を良くするための賦形剤、粉体同士を結びつける結合剤、打錠時に杵から離れやすくするための滑沢剤、錠剤が崩れやすくするための崩壊剤、皮膜錠の膜を形成するための皮膜剤、光からの保護のために加える色素、皮膜の割れを防ぐ可塑剤などを含みます。

入荷試験はGMPの一部で、原料が規格に適合していることを確認する過程です。品質部門による結果の確認・承認後に原料の製造への使用が可能となります。

造粒工程では、有効成分と賦形剤などの添加剤を混ぜ、粒にする工程です。粒にすることでその後の工程での原料のあ使いやすさを上げたり、溶解性を良くしたりします。通常濡らして造粒する撹拌・流動層造粒や、濡らさず押し固める乾式造粒などを用います。濡らした場合には造粒後に乾燥工程を必要とします。

混合工程は造粒物と賦形剤、滑沢剤などを混ぜる工程で、通常は容器回転型の混合機を用いてかき混ぜます。均一に混ぜることで製剤の均一性を保つことを目的としています。滑沢剤は混ぜすぎると逆に杵につきやすくなり、錠剤の硬度も下がるため、最後に加えて短時間混ぜます。

打錠工程は混合した造粒物を杵と臼で圧縮成形する工程です。通常は回転式打錠機というものを用い、1分間に1000-2000錠程度圧縮成形します。カプセル剤ではカプセルに造粒物を詰める工程が打錠に当たります。圧縮成形することで扱いやすく、飲みやすい錠剤とします。圧縮成形時の圧力により錠剤の硬さや溶解性を調節することもできます。

皮膜工程は錠剤を膜で覆うことで、光や酸素などによる有効成分の変化を防ぐ工程です。製品によっては糖の層を重ねる、糖衣層を巻く工程を経るものもあります。

包装工程では、錠剤をブリスター(PTP: Push Through ass="speakerdeck-embed" data-id="145769ffa7144bf9a323da34d2369371" data-ratio="1.77777777777778" src="//speakerdeck.com/assets/embed.js">

固形経口製剤の製造について、基礎からまとめていきます。まずは製造の流れについて説明します。固形経口製剤は局方の製剤各条に記載されている製剤のうち、経口投与する固形のものを指します。多くの場合、有効成分と添加剤を混ぜ、様々な工程を経て錠剤、カプセル剤、粒剤のいずれかに加工、販売されます。

製剤製造の流れは剤形により異なりますが、概ね購買、入荷試験、秤量、造粒、混合、打錠、皮膜、包装、出荷試験などの工程を経て製造されます。これらのうち、入荷試験と出荷試験は品質部門の工程となります。

購買では原料を原料メーカーから購入します。購入した原料は品質部門による品質確認を受けます。原則として原料調達、在庫確保、購入交渉は購買部門のタスクですが、原料製造元の照査は品質部門のタスクになります。原料には有効成分の他、成形性を良くするための賦形剤、粉体同士を結びつける結合剤、打錠時に杵から離れやすくするための滑沢剤、錠剤が崩れやすくするための崩壊剤、皮膜錠の膜を形成するための皮膜剤、光からの保護のために加える色素、皮膜の割れを防ぐ可塑剤などを含みます。

入荷試験はGMPの一部で、原料が規格に適合していることを確認する過程です。品質部門による結果の確認・承認後に原料の製造への使用が可能となります。

造粒工程では、有効成分と賦形剤などの添加剤を混ぜ、粒にする工程です。粒にすることでその後の工程での原料のあ使いやすさを上げたり、溶解性を良くしたりします。通常濡らして造粒する撹拌・流動層造粒や、濡らさず押し固める乾式造粒などを用います。濡らした場合には造粒後に乾燥工程を必要とします。

混合工程は造粒物と賦形剤、滑沢剤などを混ぜる工程で、通常は容器回転型の混合機を用いてかき混ぜます。均一に混ぜることで製剤の均一性を保つことを目的としています。滑沢剤は混ぜすぎると逆に杵につきやすくなり、錠剤の硬度も下がるため、最後に加えて短時間混ぜます。

打錠工程は混合した造粒物を杵と臼で圧縮成形する工程です。通常は回転式打錠機というものを用い、1分間に1000-2000錠程度圧縮成形します。カプセル剤ではカプセルに造粒物を詰める工程が打錠に当たります。圧縮成形することで扱いやすく、飲みやすい錠剤とします。圧縮成形時の圧力により錠剤の硬さや溶解性を調節することもできます。

皮膜工程は錠剤を膜で覆うことで、光や酸素などによる有効成分の変化を防ぐ工程です。製品によっては糖の層を重ねる、糖衣層を巻く工程を経るものもあります。

包装工程では、錠剤をブリスター(PTP: Push Through Package)やボトルに詰め、更に箱に入れます。ボトルや箱には表示義務があり、添付文書を添える形とします。包装することで錠剤の安定性を高める効果があります。

出荷試験では、出荷前に製品が品質規格を満たしていることを確認します。品質管理の一環として、通常1ロットずつ行います。出荷試験の承認により、製品が出荷可能な形となります。この試験はGMPに従い実施します。製品の一部は保管し、安定性試験用検体や保管検体とします。

医療機器のクラス分け

医療機器は、その侵襲性や生命に与えるリスクによりクラス分けされ、クラスにより規制が異なります。クラス分類はGHTFに規定されている方法によって分類されています。日本の薬機法では、人体へのリスクがほぼ無い一般医療機器(クラスI)、人体へのリスクがありうる管理医療機器(クラスII)、人体へのリスクが比較的大きい高度管理医療機器(クラスIIIとIV)に分類されています。さらに、専門的な保守管理が必要な理療危機は特定保守管理医療機器、設置や組み立てを管理する必要があるものは設置管理医療機器とされています。この特定保守管理医療機器と設置管理医療機器はクラス分類とは独立に定義されているようです。

日本の医療機器のクラス分けはGHTF SG1に従って規定されているとされています。このGHTF SG1では、リクスが低いクラスA、人体へのリスクがやや低いクラスB、人体へのリスクがやや高いクラスC、人体へのリスクが高いクラスDの4分類とされており、日本の医療機器と同様のクラス分類とされています。クラスがAからDに近づくにつれ、厳密な規制が必要とされます。ただし、いずれのクラスにおいてもQMSの適用は必要となります。

非侵襲的な医療機器では、皮膚に触れる部分における侵襲性によりクラスが分類されます。皮膚を覆うものはクラスA、傷口の環境に影響するものはクラスB、ひどい傷ややけどなどの治療を目的とするものはクラスCとなります。液体や気体を介した侵襲性についても評価し、液体や気体を吸い取るだけのものはクラスA、血液・体液に干渉するものはクラスB、輸液バッグはクラスCとなります。同様に血液や体液との干渉性によるクラス分けもあり、組成に影響するとクラスC、気体や熱の交換を行うものはクラスBとされています。

侵襲性の医療機器では、侵襲度と侵襲の時間によりクラスが分けられます。体の開口部(鼻や口)に短時間触れるものはクラスA、1時間以上触れるとクラスB、30日以上触れるものはクラスCとなります。手術では、短時間使用して、使い捨てるものがクラスA、使い捨てないものが暮らすB、ほとんどの手術用機器はクラスCとなり、特に侵襲性の高いものはクラスDとされます。埋め込み型においても同様に侵襲度と侵襲の時間が重要となり、長期埋込み型はほぼクラスC、歯科系のみクラスBとなりうる、生命維持に必須となるものはクラスDとなります。

電力などの供給を伴う医療機器にもクラス分けのルールがあり、電力供給があるものは最低クラスB、人体へのリスクがあるものはクラスCとなります。診断機器や人体から吸引するタイプのものはクラスB、生命維持に必要な診断機器やモニターはクラスCとなります。人体から吸引するばあいにも、リスクが大きいものはクラスCとなります。詳しくはGHTF SG1に記載されているフローチャートを確認し、クラスを判断するのがよいとされています。

医療機器QMS省令 6 データ分析、CAPA、追加要求事項

医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(Quality Management Systems、QMS省令)は医薬品のGQPに当たる省令で、薬機法第23条に医療機器の製造販売承認の条件として定められているものです。6では、データ分析とCAPAについてまとめています。

データを収集し、分析を行うことは出荷判定や工程進行に重要な要素となります。収集するデータは要求事項などに従い定義し、データを収集、分析した結果は記録し、保管します。

分析や苦情から変更が必要となることがわかった場合には、改善のための変更を実施します。製品受領者の苦情に関する調査は記録、保管し、分析した後、関連各所に苦情の原因を連絡します。通常は苦情に対するCAPAを実施しますが、CAPAをしない場合にはその理由の承認、承認の記録が必要となりあmす。承認後2年以内の副作用(不具合)報告についてはその方法と手順を定めておきます。CAPAでは、不適合の照査、原因特定、措置必要性の評価に従い、必要に応じて行います。起こりうると考えられる不適合に対しても予防措置は必要となります。CAPAの実施後、その実効性を照査し、評価します。

製造販売業者が医療機器の製造を外部委託する場合には、製造業の承認を受けた製造所におけるQMS適合性の確認が必要となります。

品質管理監督文書や記録は特定保守管理医療機器では15年、それ以外の医療機器では5年の保管が必要です。製造所からの不具合の報告については、その手順を定めておきます。製造販売後安全管理はQMSではなく、GVPで定められています。

総括製造販売責任者は製造販売業者が任命し、QMSに関わる業務を統括した上で責任を負うものとなります。総括製造販売責任者は必要に応じて管理責任者に文書で意見を述べます。この意見は5年間保管します。総括製造販売責任者は管理責任者の意見を尊重し、品質管理と安全管理の連携を図る必要があります。

医療機器QMS省令 5 製造と測定

医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(Quality Management Systems、QMS省令)は医薬品のGQPに当たる省令で、薬機法第23条に医療機器の製造販売承認の条件として定められているものです。5では、医療機器の製造と工程検査や出荷試験に当たる測定についてまとめています。

識別とは、製造工程において製品を識別するための情報を表示することを指します。識別の手順は文書として定めます。返却された製品と適合品の見分けが付くように標識し、製品の状態に関しても表示します。製品受領者の物品についても同様です。製品はトレーサブル(追跡可能)である必要があります。追跡可能性の維持できるよう記録を定め、識別・管理・記録します。特定医療機器では販売業者によるトレーサビリティの記録を必要とする場合もあるようです。

製品は製造から出荷までその要求事項への適格性を保持することとされており、保管条件により適格性に影響がある場合には保管の条件等を定め、記録する必要が生じます。同様に、適格性の実証に必要となる設備や器具を明確にし、監視や測定(工程検査や出荷試験に当たります)の手順を定めます。監視や測定に用いる器具には校正(キャリブレーション)と調整の手順を定め、校正・調整された状態を保ちます。製品が不適合となった場合には不適合の評価を行い、必要な措置(改善)を行います。監視や測定の結果は記録し、保管します。

測定・分析は製品の要求事項、QMS適合性の実証のために、計画書に規定して行うようです。製造販売業者が受領者要求事項への適合を監視する責任を負います。不適合や不具合等の受領者からの情報を収集する仕組みを確立し、警告やCAPA(是正・予防措置)のためにその情報を利用します。

製造販売業者はQMS適合性や製品実現計画のための内部監査を行います。内部監査の手順などは実施計画に基づき、あらかじめ定めた判定基準を用いて行います。内部監査を行うものの客観性は十分に保ち、監査記録を作成、保管します。監査不適合の場合には措置を取ります。

工程、製品の要求事項の適合性を確認するため、工程、製品の監視や測定を行う必要があります。適合性を確認し、確認できない場合にはCAPAを実施します。製品の出荷判定基準の証拠として、監視・測定の結果を記録、保管します。ある工程での適合性が確認した後に、次工程への進行が可能となります。適合しない製品(不適合製品)は操作や出荷を防ぐため、識別・管理が必要です。不適合製品の処理の手順はあらかじめ定め、除去・特別採用・使用不可のいずれかの措置を取ります。特別採用は法令の規定に適合していることが条件となります。製品の修正を行った場合には再検証による適合性確認を行います。出荷後の不適合に関しては適切な措置(おそらく回収を指します)を取ることとされています。