皮膜1

皮膜工程は錠剤表面に薄いフィルムを形成し、錠剤や有効成分を保護し、外観を良くするための工程です。溶出制御性の皮膜では、溶出率を下げたり、徐放性をもたせたりすることもあります。一般的にフィルムの厚みは100μm以下で、錠剤にフィルムの基剤を溶かした溶液をスプレーしながら乾燥させ、フィルムを成形します。スプレーしながら乾燥させるため、そのバランスを取ることが重要となります。

皮膜機は横型洗濯機のような形状をしていて、ドラム、スプレー、送風部からなります。ドラムは錠剤を詰め、回転させることでドラム内の錠剤をかき混ぜます。ドラム内の錠剤にかき混ぜながらスプレーをかけることで、すべての錠剤に均一にフィルムを成形していきます。ドラムには穴が開いており(パンチ穴)、穴から高温空気を送風し、スプレー液を乾燥させます。

皮膜液の処方は通常フィルムを形成する高分子、可塑剤、色素、溶媒からなります。可塑剤はフィルムのガラス転移温度を下げ、柔らかくする効果を持ちます。色素は光防護性や外観のために加えます。高分子や可塑剤は溶媒に溶解もしくは分散させ、スプレーで吹きかけることになります。

高分子には様々な種類があるため、体内での溶解性、粘性、物理的特性などにより適切に選択します。分子量が高いほど粘性や引張強度が高く、分子量が小さいほど溶解性や付着性が高くなります。年生が高すぎるとスプレーミストの形状(主にサイズ)が悪くなり、皮膜の品質を下げる原因となります。

可塑剤によりガラス転移温度が下がりますが、皮膜は通常ガラス転移温度以下では硬く、丈夫になりますが、同様に刻印などに皮膜を行き渡らせるのが難しくなります。可塑剤により適切に膜を柔らかくすることで引張強度は下がりますが、皮膜の品質は上がりやすくなります。グリセリンポリエチレングリコールが代表的な可塑剤となります。

色素は製剤の識別や有効成分の光安定性を高めるために加えます。二酸化チタンは通常皮膜に加えることが多い成分で、白色の皮膜となります。その他に三二酸化鉄やタール色素などを用いることもあります。いずれも水には溶けず、溶媒に分散させて用います。光安定性向上のため、遮光性が高いことが重要な要素となります。

その他の成分として、付着防止剤や香料、界面活性剤などを加えることもあります。特に分散性の高分子などを用いるときには、水との親和性を高めるために界面活性剤を加えることもあるようです。徐放性の製剤では、高分子自体は水に溶けないものを使用し、フィルムに穴を空けることでゆっくりと有効成分が放出されるよう、小孔を作るための溶解性成分を加える場合もあります。

溶媒としては、水、エタノールメタノール、塩化メチレンなどが代表的なものです。昔はメタノールや塩化メチレンなどを用いられていたこともあったようですが、その毒性が高いため、現在ではほぼ用いられません。即放性の製剤では水溶媒を用います。ただし、有効成分が水に弱い場合もあるため、有効成分が原因で水を使わない場合もあります。水を溶媒とすると、その大きい蒸発熱(潜熱)のために温度を高めに設定する必要があります。有効成分が熱に弱い場合にもエタノールなどの有機溶媒を用いることもあるようです。