添加剤: セルロース系添加剤

医薬品の添加剤として、セルロースやその誘導体は様々な目的で多用されています。セルロースの誘導体は賦形剤(成形性を良くするための添加剤)、崩壊剤(錠剤を崩壊しやすくするもの)、フィルム剤(皮膜成分を構成するもの)、結合剤(粉体同士を結びつけ、粒を形成させるもの)などとして多岐に渡って使用されます。セルロース自体は植物の細胞壁の主成分であり、植物から単離されています。セルロースグルコースの多量体で、親水性に富み、高い引張強度を持ちます。このセルロース水酸基に修飾を入れたものがセルロース誘導体です。修飾のタイプにより親水性が変化し、多用な性質を持つものに変換されています。

結晶セルロースは修飾のないセルロースで、基本的に賦形剤として使用されます。セルロースの長さや粒度などによりいくつかのグレードに分かれており、それぞれ成形性や取り扱いのしやすさが少しづつ異なっています。

ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)は局方記載のセルロース誘導体で、セルロースをメトキシ化・ヒドロキシプロピル化して作られています。置換の度合いにより4種類程度に分類され、置換の度合いが高いほど粘性が高くなります。ヒプロメロースはフィルムコーティングの基剤や結合剤として用いられます。

メチルセルロースは局方記載のセルロースのメチルエーテルで、水溶性の物質です。水溶性で結合剤やフィルムコーティング剤として用いられますが、ヒプロメロースほどには多用されていない印象です。

ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は局報記載のヒドロキシプロピル化セルロースで、水溶性のポリマーです。通常結合剤として用いられます。グレードにより結合性が異なります。

低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)はHPCのうち、置換度が低いもの(5-16%)を指します。水に不溶で、水を吸うと膨らむ性質を持ちます。その性質から崩壊剤として使用されます。

エチルセルロースセルロースのエチル化修飾物で、水に溶けず、有機溶媒に溶ける性質を持ちます。水に溶けないため、徐放性製剤のフィルムコーティングや苦味マスキングなどに使用されています。

ヒプロメロースフタル酸エステルは局報記載のヒプロメロースのフタル酸エステルで、酸性下で水に溶けず、pH5-5.5で水に溶ける性質を持ちます。この性質から、胃で溶けず、腸で溶ける腸溶性製剤に用いられます。

ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルは局報記載のヒプロメロースの酢酸・コハク酸混合エステルで、水にも有機溶媒にも溶ける性質を持ちます。フィルムコーティングの基剤として用いられます。

ヒドロキシエチルメチルセルロースはヒドロキシエチル基を持つヒプロメロースです。食品添加物には使用されるようですが、あまり医薬品に使用されている印象はありません。ヒプロメロース同様にフィルムコーティング基剤や結合剤として使用されるようです。

カルメロースはセルロースの酢酸エステルで、局報記載されています。水に不溶で、水を吸って膨らむ性質を持つため、崩壊剤として使用されます。同様にカルメロースカルシウムも崩壊剤として働きます。クロスカルメロースナトリウムはカルメロースを内部架橋したもので、カルメロースやカルメロースカルシウムと同様に崩壊剤となります。