皮膜2

皮膜工程は錠剤表面に薄いフィルムを形成し、錠剤や有効成分を保護し、外観を良くするための工程です。2では製剤の溶解性と皮膜の関係についてまとめています。

即放錠では、すぐに溶ける水溶性の高分子をフィルム剤に用います。セルロース系の化合物が一般的に用いられています。光防護、安定性向上、苦味マスキングなど、その目的に応じてフィルム剤を選択するとともに、製剤の外観や生産性、溶解性などもフィルム選択における重要な要素となります。

溶出制御剤とは、腸溶性や徐放性の製剤を指します。腸溶性製剤は胃での有効成分の分解や、胃特有の副作用などを防ぐために使用されます。徐放性製剤は投与回数を減らすとともに、長い時間血中濃度を安定的に保つために用いられます。共に皮膜の完全性が重要となり、不完全な皮膜では漏れが発生して機能が低下します。溶出制御剤では皮膜原料の選択がより重要となります。

腸溶性のフィルムコーティング錠では、Polyacidの高分子を使用します。Polyacidはカルボキシル基をたくさん持つ高分子で、pHが5以上にならないと水に溶けない性質を持ちます。通常は原料供給元が製造する基剤を基に皮膜液を調整します。徐放性製剤では水に溶けないフィルムを通常使用します。フィルムに微細な孔を空けたりすることで放出速度、頑強性、調節性などを調整します。フィルム基剤としてはエチルセルロースが代表的です。フィルムではなく、錠剤全体からの溶け出しで徐放性を達成するもの(マトリックス型徐放性製剤)もあります。

皮膜工程では、通常錠剤重量の2-4%を皮膜として形成します。放出制御製剤では膜の厚さが溶出性に直接影響するため、厚さの均一性や調節がより重要となります。腸溶性製剤では通常30-50μmの膜を形成します。小さい錠剤では比表面積が大きいため、錠剤重量に対して皮膜量が多くなることになります。

皮膜のドラム(パン)は横回転型の洗濯機と同様に、回転することで中の錠剤を流動させ、流動している錠剤の表面にスプレーを吹きかけることですべての錠剤にまんべんなく皮膜を形成するようになっています。錠剤の温度はあらかじめ上げておき、スプレーで温度を下げながら熱風で乾燥させていきます。ドラムには錠剤がよくかき混ざるようにバッフル(邪魔板)がついています。ドラムではスプレーが錠剤に均一にかかり、スプレーと乾燥のバランスが取れていることが重要となります。乾燥のため、通常ドラムには通気用の穴(パンチ)が開いています。熱風はドラム内へと送風され、パンチを抜けてドラム外に排出されます。皮膜機の多くには錠剤を排出する仕組みがついており、ドラムを逆回転させることで排錠できる仕組みを持つものが一般的です。

送風システムでは、外気を一度低温にし、除湿します。外気や排気に混入している異物はフィルターで取り除きます。ドラム内はやや陰圧となるように制御されています。送風の温度や量をスプレー量や乾燥の程度、錠剤温度を見ながら調節し、最適な皮膜条件を設定します。