ICH M10 生物学的分析法バリデーション 6

ICH M10は生物学的な分析方法に対するバリデーションについてのガイドラインです。バリデーションの種類や方法、報告について述べられています。6では再測定やその他の事項についてまとめています。

発生したサンプルの再分析(Incurred Sample Reanalysis: ISR)は測定サンプルの一部を別の分析や別の日に測定し直すことを指します。ISRは前臨床や早期のPivotal等で実施される、バリデーションにおける重要な要素の一つであるとされています。ISRは分析対象とサンプルについて理解を深めるために実施し、サンプルの10%程度をISRの対象とするとされています。PK研究では、Cmax付近と消失相からサンプルを選んでISRを実施することが推奨されています。ISRで許容範囲を外れたり、一回目の測定との差が大きいときには分析し、対処する必要が生じます。ISRの結果は文書とし、申請パッケージにおけるバリデーションとして報告します。

クロスバリデーションはバリデーション済みの試験と、バリデーション対象の試験を比較する際に行うものです。違う施設で実施する同じ試験は対象となりません。基本的に本サンプルでの試験実施前には完了させておく必要があります。

分析対象と同じ物質が生体内にある場合には、あらかじめ生体内にある物質量の変動を測定しておく必要があります。測定では標準を追加する、生体内物質を引いて計算するなどの方法を取ります。

パラレリズムとは、検量線と試験検体の希釈系の回帰にある平行性を指す言葉です。平行性の確認や、平行でないことが明らかになったときには報告書に記載が必要となります。

Recoveryとは、抽出したときの抽出効率を指す言葉です(おそらく回収率に当たると思われます)。Recoveryは100%である必要はありませんが、ISと検出対象の間に差がないことが求められます。Minimum Required Dilutionはリガンド結合分析におけるサンプルの最小希釈率を指す言葉です。開発時に決定し、サンプル、QC、検量線で同一に設定します。希釈率の変更時には部分バリデーションが必要となります。診断時に使用する商用キットはこのガイドラインの対象とはなりませんが、商用キットを臨床研究の分析で用いる場合にはバリデーションを必要とします。

新技術を使用する場合には、既存の方法との差を説明する必要が生じます。新技術の使用はあらかじめ規制当局と相談した上で行います。このような技術としてはDried Matrix Method(血液サンプルを乾燥させたものを用いる方法)などがあるようです。

文書としては、SOPや記録、その保管が重要となります。文書は分析を行う施設に、データの監査・査察に耐えうる状態で保管し、訂正箇所が後からわかるようにします。CTDでは2.6.4や2.7.1に記載するとされています。