ICH M10 生物学的分析法バリデーション 2

ICH M10は生物学的な分析方法に対するバリデーションについてのガイドラインです。バリデーションの種類や方法、報告について述べられています。2では、クロマトグラフィーのバリデーションについてまとめています。ガイドラインはStep3ですので、変更になる可能性もあります。

クロマトグラフィーでは対照を検量線用、QC用に用います。検量線用とQC用の対照サンプルは別のストックから準備することとされています。測定では内部標準を加えて検量線を作成し、QCを実施します。標準物質はトレーサビリティを保ち、品質確認を行います。局方のもの、社内標準のいずれにおいても、試験成績書(Certificate of Analysis)を必要とします。質量分析器を用いる場合には、同位体ラベルされた内部標準を用います。標準物質はCoAに記載された安定性を保つことができる期間のみ使用できます。

バリデーションのうち、Selectivity(選択性)は分析対象の特定能力(分離度に近いものだと思われます)を指します。6個異常のブランクサンプルで検証し、内部標準や被験物質と同じ場所のピークが存在しないことを確認します。分析対象の下限20%、内部標準の下限5%に干渉がないことを確認し、同様に血漿中に含まれるトリグリセリド(脂質だと思われます)の影響を調べておきます。溶血の影響についても最低1サンプルで検証します。

特異性(Specificity)は構造的に類似したものとの分別能力を指すもので、クロマトグラフィーでの分離と分子量について検証します。基準値はSelevtivityと同様で、物質が構造変化後に元に戻るような現象についても検証するとされています。

Matrix effect(対象サンプルの影響)は、サンプルの種類(血漿など)による影響を指します。低・高QCでそれぞれ3回、6ロットで検証し、平均精度が±15%、個々のサンプルで15%以上の値とならないことを調べます。特殊集団(腎・肝機能障害など)のサンプルについても可能であれば検証します。

検量線と範囲の検証では、既知濃度の分析対象を用いて、検量線とその範囲を決定します。濃度は0を含めた7点以上とします。基本的な回帰計算方法(おそらく直線を指しています)を用いて回帰することとされています。6点以上のうち、75%が規格内となることを確認し、最低でも1度は新規調製の標準で測定します。

QC用サンプルは、既知濃度の分析対象を含む、研究サンプルに似せたものとします。分析精度を保つため、通常は標準とは独立に、検量線範囲内の4濃度としてQC用サンプルを調整します。

正確性(Accuracy)と精度(Precision)はQC測定での各測定の比較、測定間の比較により求めるとされています。2日間にわたる3回以上の測定での検証も行います。

キャリーオーバーは、事前に測定したサンプルからの残留量を指します。上限濃度サンプル後にブランクを測定し、ピークの存在を確認します。

希釈に対するインテグリティとして、希釈系での測定を行い、正確性・精度を検証します。