ICH E17 多地域での臨床開発 3

ICH E17は多地域での臨床開発についてのガイドラインです。3ではサンプル数の設定、プール化、安全性の取り扱いについてまとめています。

サンプル数は対象群、地域全体において効能が評価できるよう設定します。通常は地域ごとに層別化しランダム化・解析することを考慮した設定とします。地域を通じた効能評価を行い、差があれば更に検証します。地域間で効能の差がある場合にその差を検出できるような設定とします。サンプル数の設計は基本的にICH E9(臨床統計の原則)に従います。地域間でのばらつきは初期探索研究で推定し、そのばらつきを考慮に入れた設計とします。有病率、発病率、その他の要因を考慮に入れた上で、治療効果の一貫性を検証できるように各地域にサンプル数を分配します。

プール化(Pooled Regions/Pooled Subpopulations)とは、特定の地域や集団を同じものとして扱う方法を指します。アメリカとカナダを北米としてまとめる、EUを西ヨーロッパとしてまとめる等の手法がプール化に当たります。このようなプール化は内的・外的要因(遺伝的集団や民族、習慣などを指すと思われます)の類似性に従い実施します。地域だけでなく、民族分布(アフリカ系アメリカ人アジア系アメリカ人、ヒスパニック、ヨーロッパ系アメリカ人などの層別化を指すと思われます)による層別化が必要となる場合もあります。各地域に配分するサンプル数については各地域の規制当局との合意を必要とします。

安全性・効能情報の収集・取り扱いはすべての地域で標準化し、同一の目標を達成する形とします。治験関係者の訓練についても標準化します。安全性情報はICH E2(安全性情報の取り扱い)と地域の規制情報に従い管理・報告します。長期のMRCTsでは、中央データモニタリング委員会を設置することが推奨されています。画像診断等の手法は1ヶ所で評価できる形とすることで判定評価を統一する、各地域での治験開始の調整を行う、データ伝達の方法・翻訳の方法を考慮しておくことが必要になります。

統計解析計画はICH E9に従い、リスク・便益評価を可能とする形のものとして設計します。分析の戦略については開発初期に規制当局と合意しておき、主要分析の戦略に地域差がある場合には計画書に記載します。研究開始前には分析戦略を固定しておくことが重要となります。主要分析は層別化・プール化を反映したものとします。地域差が予想されるときには統計計画に組み込んでおきます。地域や民族だけではなく、性別や年齢などによる層別解析もあらかじめ定めておきます。

治療効果は地域ごとに評価し、報告します。サンプル数は個々の地域での評価を可能とするように設計しますが、サンプル数が少なくなることが考えられる場合にはプール化を検討します。治験の品質が検出力を低下させる場合があるため、モニタリング・盲検下でのデータレビューを用いる等の方法で治験の品質を維持する必要があります。

比較対照は研究デザインや倫理、現行治療の存在等を考慮して設計し、すべての地域において同じ対照を用いるようにします。対照の選択理由は計画書に記載し、同効能有効成分を対照とする場合には同一の同効能有効成分をすべての地域で用います。提供する製品情報はすべての地域で同一のものとし、同効能有効成分を用いる場合には臨床研究を実施するすべての地域でその有効成分が承認されていることが望ましいとされています。結果に大きな影響を与えない併用治療を用いることはできますが、併用可能・不可能な治療はあらかじめ計画書に定めておきます。