ICH E18 遺伝子データの管理と遺伝的サンプリング 1

ICH E18は遺伝子データの管理と遺伝的サンプリングについてのガイドラインです。臨床研究において遺伝子データを取るためのサンプルを収集したり、遺伝的データを取り扱う際についての内容となっています。遺伝子データ・サンプルの取り扱い時に被験者のプライバシーの保護、データの保護を取ること、ステークホルダー間の情報交換を推進することで、臨床研究における遺伝的研究を推進することが目的となっています。ガイドラインの対象は介入・非介入の研究を含み、研究中・研究後のいずれにおける遺伝的研究も対象とされます。遺伝的な研究は計画書に規定されている場合も、されない場合もあるようです。対象となるDNAとRNAの情報はICH E15に規定されています。
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遺伝的情報はその基礎がよく理解されてきており、医薬品開発において最大限に利用できるようになってきています。医薬品開発の潤滑な進行や将来の開発のために、臨床研究のすべての段階で遺伝的情報を収集することが推奨されています。遺伝的情報はバイアスをへらすよう収集し、品質を向上させるようにします。高い品質・正確性を持つ遺伝的情報が遺伝的研究の価値を高めるとされています。同様に情報の保管・維持におけるセキュリティに気を配る必要があります。

遺伝的サンプリング(Genomic Sampling)は遺伝的情報の収集を指します。遺伝的情報とは、DNAやRNA塩基配列、遺伝子型の決定、遺伝子の発現、エピジェネティクスなどの情報を指します。情報収集のための検体・解析・保管の方法は予め適切に定めておきます。検体の品質が結果の正確性に影響を及ぼすため(たとえばRNAはRNAseフリー、低温下での保管でないと分解します)、検体の収集・保管等の取り扱いの手順を適切に定め、記録する必要があります。施設により手順が異なると、結果も異なりうるため、研究を行うすべての施設で手順・訓練を同一のものとします。被験者のプライバシーやインフォームドコンセントを保ち、検体採取時にはバイオセーフティな手順で実施します。検体の種類は血球・組織・頬の組織・唾液・骨髄・尿・便などが代表的なものとなり、いずれからも核酸(DNAもしくはRNA)を抽出することができます。検体や組織によっては特別な核酸単離方法を必要とする場合もあります。測定や目的に適した組織を検体として採取することになります。小児では採取量が少なくなるため、検体の量を考慮した検体の選択が必要となります。他の生物や別の患者などの核酸が混入する(コンタミする)可能性があるため、注意を払います。

検体の採取では、被験者間/被験者内の変動を考慮する必要があります。DNA自体は比較的安定していますが、RNAやDNAのメチル化の状態などは日周性・薬剤投与などの影響により変化することがあります。ガンではDNAの塩基配列や修飾状態がその基となる組織や時期により変化します。

検体の保管方法は検体の種類や量、研究対象とする核酸により異なります。血液は通常抗凝固剤を加えて保管するようです。組織は液体窒素で凍らせ、超低温(-80℃が普通だと思います)で保管します。組織の固定(状態を保ったまま細胞を殺すことを指す、ホルマリンなどを用いたものが代表的)をする場合には固定や保管の方法を適切に定め、検証を行っておきます。

上記のように、DNAやRNAはpH、分解酵素の存在、酸化などにより断片化したり、科学的変化を起こすことがあります。凍結の状態、固定の状態などを最適化することで、分解を防ぐ必要があります。保管中の環境条件はモニタリングしておき、サンプルの保管に問題がないことを確認しておきます。検体の量は患者の負担を減らすために最小化し、必要十分な量とします。必要量採取できない場合には別の組織を採用することも検討する必要があります。