ICH E10 臨床研究における対照群の設定法 1

ICH E10は臨床研究における対照群(Control)の設定法についてのガイドラインです。対照群の設定は、研究における倫理的問題、結果のバイアス、被験者の募集の難しさ、エンドポイントに影響を与えます。ICH E10では効能評価における対照群選択の一般的な原則が示されています。このガイドラインの内容は安全性の比較検証時にも適用可能であるとされています。

対照群の選択において考慮すべきことは、バイアスの最小化、倫理的問題、治験実施可能性の問題、その対照群を選択した場合の利点と結果の品質、研究デザインや複数対照の使用についてであるとされています。一般的に対照群は、治験対象となる治療以外による影響を明らかにすることを目的として設定します。治験以外の影響には、病状の自然治癒や進行、患者が治療に期待することで起こる変化を指します。病状の変化は以前のデータとして存在する場合もありますが、同時に検討することが臨床研究では必須となります。このため、同じ集団から患者を対照群と試験群に割付し、治療方法以外の条件が群間で同等となるようにします。

対照群と試験群の設定において重要となるのは、ランダム化と盲検下です。無作為試験と呼ばれているのがランダム化で、対照群と試験群が治療以外は同じ集団とみなせることを補償します。盲検化は対照群と試験群で治療に対する知識を持つことで処置や診断に差が出ることを防ぐために行われます。一般的には患者も医療従事者も割付結果を知らない、二重盲検が用いられます。

対照群の種類は主に5つで、プラセボ・無処置・用量や投与スケジュールの変更・同じ効能の異なる有効成分の使用、経験から推定される結果を対照とする場合となります。経験からの推定は通常同時性を持たないため、使用しません。

対照群として最も一般的なのはプラセボ(偽薬)です。同じ見た目で有効成分を含まない製剤を用いて検証します。プラセボ使用時は一般的に二重盲検下での検証となります。有効成分がない場合の変化を追うことができ、効能・安全性の両方の評価に用いることができます。

処置しない対照群を用いる(製剤を与えないなど)場合もありますが、通常盲検下に置くことができません。有効成分による有害性が強すぎてそもそも盲検化できない場合や、バイアスを無視できる場合には使用できるときもあります。しかし、プラセボよりバイアスは大きくなります。

用量応答性コンカレント対照群は、いくつかの用量に被験者を割付する方法です。徐々に用量を増加させる場合もあります。プラセボや同効能有効成分を含む対照を含めることもあり、二重盲検・ランダム割付の下での研究を行うこととなります。

Active concurrent controlは、同効能有効成分を対照として用いる方法です。一般的に二重盲検を適用できますが、毒性により割付が判明しうる場合、投与計画や投与経路が被験薬と異なる場合には盲検化できなくなります。同効能有効成分に対する非劣性や優越性を示すことにより、結果を検証します。

External controlはコンカレント(同時実施比較)ではない対照群を指します。通常は正確性が低く、バイアスを排除できない形の研究になります。Phase Iなどの初期の探索的臨床研究ではベースライン(処置前)からの変化検証を実施する場合もありますが、このようなベースラインからの変化の検証もExternal controlとなります。

1つ以上の対照群を用いる場合(Multiple control groups)もあります。同効能有効成分とプラセボを同時使用する場合などがこれに当たります。用量依存性などが不明瞭で、適切に同等な治療を選べない場合などに治療効果を示す担保として行われるようです。