ICH S1A 発がん性研究

ICH S1Aは発がん性研究に関するガイドラインです。発がん性を検証するための非臨床研究について述べられています。発がん性は臨床開発前に動物で検証し、暴露時の遺伝毒性、腫瘍誘導性を検証します。日本では6ヶ月以上の臨床試験を実施する場合、臨床試験前に実施が必要とされていたようです。3局での発がん性非臨床研究の取り扱いが異なったため、S1Aで調和されることになったようです。ガイドラインの目的は、動物試験での発がん性の検証方法について、適用期間と試験の実施、対象患者数などの要因による適切な研究デザインと実施時期の選択について定めることです。

発がん性研究は6ヶ月以上の臨床試験の実施前に実施します。間欠的に長期投与する場合、長期暴露を起こす投与経路などにも必要となりますが、短期の適用となるものには普通必要ありません。発がん性が疑われる有効成分の場合には、発がん性検証の実施が推奨されます。遺伝毒性がある物質では、長期の非臨床研究は必要としません(おそらく発がん性があると考えられるからだと思われます)。遺伝毒性での偽陽性偽陰性の発生を下げるよう遺伝毒性試験を実施します(遺伝毒性についてはS2に記載されています)。発がん性研究は第3相の臨床試験までに実施します。患者数が多く、発がん性のリスクが高い場合には早い時期に実施することもあるようです。重篤な症状のための医薬品、余命が2-3年となるような医薬品では、発がん性を臨床試験前に考慮する必要はありません。

発がん性研究での投与経路は基本的にヒトへの投与経路と同じもので検証します。別の経路を使う場合には薬物動態から正当化が必要です。局所投与製剤(経皮剤など)では全身での曝露を伴う発がん性研究が必要となるときもあります。化学合成・生化学合成された医薬品有効成分では、内生のものとほぼ同様に作用される場合を除き、特別な配慮が必要であるとされています。