ICH S1B 発がん性の検証

ICH S1Bは発がん性の検証に関するガイドラインです。発がん性研究の検証・評価方法について述べられています。発がん性の検証では不要な哺乳類での長期発がん性試験を減らしつつ、正確に発がん性を検証可能な長期試験の方法について定められています。

検証の順番として、発がん性の検証は遺伝毒性の検証後に実施します。遺伝毒性についてはS2に従い検証します。用量はS1A、薬力学的研究についてはS1Cに記載されているとされています。多回投与についても遺伝毒性の検証が先となります。

発がん性は単一の系では十分な検証ができません。げっ歯類での長期試験は必須となりますが、必要に応じて追加の試験が必要です。長期試験は基本的にはラットを用い、対象とする物質の性質により使用する動物種を変更します。追加のin vivo試験として、短期/中期のげっ歯類での試験、長期の2種類のげっ歯類での試験を行います。短期・中期の試験はがんの発生機構を検証するために実施します。検証には遺伝子組み換えマウス(おそらくがんを発症しやすいものだと思われます)をもちいてもよいとされています。短期/中期の試験を選択する場合には、発がん性の証拠を示すために必要であることを十分に説明し、薬物動態学や暴露法を考慮して実施します。

がんの発生機構の研究として、用量やその他の環境の影響を明らかにします。被験物質が細胞レベルの形態・組織・機能に及ぼす影響、生化学的な変化、遺伝毒性などから発生機構を示します。実験計画の最適化も有用であるとされています。

長期試験には基本的にラットを使用します(発がん性の感受性が高いため、サイズが大きくて比較的検証しやすいため)。2種のげっ歯類での研究も検証に有用です。ラット・マウス共に肝がんの誘導は信頼性が高くないとされています。げっ歯類では遺伝毒性がなく、発がん性がある場合もあるのでヒトでの応答の考察が重要となります。被験物質の代謝で生成する物質の遺伝毒性についても検証します。この検証にも基本的にラットを選択して実施します。発がん性の評価は腫瘍の発生率と潜伏期間から評価します。