湿式造粒1 湿式造粒の基本的事項

このあたりから、Developing Solid Oral Dosage Forms(固体経口製剤の開発、Academic Press)を読んで勉強した内容となります。この教科書は固形経口製剤の製造に関わる技術、知識等がまとまって記載されているため、製剤の製造や開発に非常に有用な内容となっています。

湿式造粒は粉体に結合剤と溶媒を混ぜ、粉体の粒子サイズを大きくする(造粒)方法の一つです。医薬品では錬合造粒と流動層造粒、押出造粒が代表的な湿式造粒です。造粒では粉体の密度、流動性、圧縮成形性や均一性、分散性、輸送性を高めることが目的となります。湿式造粒は直打や乾式造粒と比較し、利点が大きいときに採用されるとされていますが、これは海外ではそのコストの低さから直打や乾式造粒が好まれるためだと思われます。日本では湿式造粒を採用することが一般的です。

湿式造粒の機器はたくさんあり、チョッパのついた錬合機、リボンブレンダー、高速撹拌錬合造粒機、流動層造粒機、スプレードライなどが湿式造粒機にあたります。押出造粒機も湿式造粒ですが、他の機器と比較するとかなり質の異なる造粒物が得られます。医薬品の造粒では高速撹拌錬合造粒機と流動層造粒機が最も一般的に用いられています。造粒機や造粒方法はAPIの性質、造粒物に求められる流動性や密度、水分や粒度の調節が効くこと、粒度の再現性が良いこと、打錠性や製造コスト、工程管理など、多岐にわたる性質に従い適切なものを選択することになります。

造粒物は水との混合具合により、ほんの少し濡れた状態から、スラリー(泥のように流体化した状態)まで変化します。造粒には粉体同士を水がつないでいる状態(索状水)とやや水が多い状態(毛管水)の間ぐらいの状態が良いとされています。

造粒物は、まず造粒の核ができ、核に粉体が付着して核が成長し、造粒物となります。さらに造粒を続けると造粒物表面に粉体がくっついて成長し、最終的には造粒物同士が結合するようになります。造粒物が結合するようになると造粒は通常過剰となり、打錠や混合での含量均一性にマイナスの影響を与えます。造粒では必要な水分量、最終的な造粒物のサイズ分布と完了時間、造粒後に必要とされる性質、工程管理の方法を考慮して処方や工程時間を開発します。

造粒前には通常有効成分や賦形剤などの原料をよく混合し、均一性を高めます。この混合は乾燥状態で行います。粉体の粒子が小さいことが多いため、この段階で有効成分などが失われる場合があります。

撹拌造粒では、混合後の粉体に結合剤と溶媒(通常は水)を加え、撹拌羽根で練りながらチョッパと呼ばれる刃で造粒物を切ります。必要によっては結合液はスプレーとして加えたり、あらかじめ粉体中に結合剤を混ぜ込む場合もあります。造粒機用量の50-75%を仕込み量とすることが多いようです。造粒初期には濡れの不均一性があり、造粒中にもよく混ざらない、側壁にくっついた部分などが残る場合もあります。造粒物のサイズは初期は50-100μm程度、完了前には100-400μmを目指すのが一般的なようです。通常造粒物のサイズが均一で、あまり微粉末が残らないものが出来上がるのが理想となります。造粒のエンドポイントは目視や、握ったときの崩れ方などで確認します。造粒物のサイズにばらつきがある、スケールアップで品質が変わる、安定性の問題、打錠での問題(スティッキングなど)はよく起こる問題です。工程を理解し、このような問題が生じないような造粒物を得られる工程を確立することが湿式造粒では重要になります。