ICH E18 遺伝子データの管理と遺伝的サンプリング 2

ICH E18は遺伝子データの管理と遺伝的サンプリングについてのガイドラインです。2では、検体の品質、保管、データの取り扱いについてまとめています。

核酸の品質と収量が結果に影響を与えうるため、その抽出法の最適化・定義を行うことが重要となります。検体の種類により、最適な抽出法はことなります。RNAはRNaseフリーの環境で抽出すること、凍結・溶解を繰り返さないことが核酸の品質維持に重要な要素となります。PCRなどでDNAを増幅する場合には、ヘモグロビンやメラニンなどによる干渉が起こりうるとされています。抽出に用いる試薬等の品質によっても核酸の品質が変化しうるようです。

検体の安定性を維持するため、検体の輸送や保管の環境はあらかじめ定めておき、輸送・保管中の環境条件についての記録を残します。サンプルは分離して保管することで、あるサンプル群を非安定な環境下で失った場合や、再測定するサンプルの凍結・溶解の繰り返しを避けます。サンプルの使用記録や在庫記録は残しておきます。

遺伝的なデータは体細胞、生殖細胞ミトコンドリアから得られます。このデータにはヒト以外の生物の情報を含むこともあります。データは同一被験者から複数回取得しておくとその信頼性は高くなります。データの取得方法は様々で、技術的に進化しているため(ここ30年ぐらいでゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動+蛍光法シーケンサ、次世代高速シーケンサと進化しています)、最も信頼性が高いものを用いてデータを取得します。データの取得方法はバリデートし、抽出・分析の方法は手順として定めておきます。結果の品質管理の方法、合格基準についてもあらかじめ定めます。データは公的なアノテーションツール(遺伝子情報検索ツール)を用いて解析、アノテートします。このアノテーションツールや統計分析の方法も文書として定め、保管します。データの使用にはコンプライアンスを定め、コンプライアンスに従ったデータの取り扱いを行います。

データは通常生データ(蛍光法によるシーケンサなら、蛍光強度のデータなど)と、加工後のデータ(塩基配列など)が生じます。生データは保管し、生データからの加工のワークフローは手順として文書化します。データは安全かつ長期保管できるようにし、完全廃棄を行わないようにします。データにはプライバシーの情報が含まれるため、ICH E15に従いデータの秘匿性を保ちます。閲覧条件やデータの取扱についてはインフォームドコンセントに記載し、被験者の承認を受けます。
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データ解析により見つかった遺伝的メカニズムの情報が、被験者に恩恵がある形とすることが望ましいとされています。遺伝的に見つかった事象について患者の治療に活かすとともに、患者に情報を伝えます。患者に情報を伝える方法、治療適用の方法は定めておき、患者の希望に従い情報伝達・治療適用を行います。