ICH E10 臨床研究における対照群の設定法 4

ICH E10は臨床研究における対照群(Control)の設定法についてのガイドラインです。4では、プラセボ対照群と用量応答性研究についてまとめています。プラセボ研究についてはある程度3でまとめましたので、下記リンクを参照ください。
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プラセボ研究の利点は、感度(効能の確かさ)を示すことができること、効能・安全性の絶対値を測定可能であること、比較的少ない被験者数で検証が可能であること、二重盲検を採用可能であることが挙げられています。一方、プラセボ研究では治療効果がないため、致命的な病状や患者が治療効果のないことを受けれられない場合には使用することは倫理的にできません。プラセボ研究では重症の患者を研究対象としない場合もあるようです。他の治療法との比較を行う場合には、プラセボではなく同効能有効成分や他の治療法を使用する必要があります。

治療なし対照(No-treatment control)はその名の通り、何もしないという対照群です。何もしないので、基本的には盲検下で実施できません。割付を知らない(盲検下にある)観察者が意思決定する形での研究が望ましいとされています(おそらく意思決定に割付情報のバイアスが生じうるから)。データセットの設定においても同様の、割付情報を得ていないものが行うとされています。

用量応答性における対照については、基本的にはICH E4に従います。ICH E4に記載されているように、プラセボを同時に投与する型で実施することが望ましいとされています。同効能有効成分やランダム化離脱などの手法を用いてもよいようです。
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用量応答性においても、盲検によるバイアス低減が可能です。プラセボほど効能の差が大きくないため、治療効果による盲検解除が起こりにくいことが特徴です。用量違いの投与であっても、製剤の見た目が同じとなるよう調製します。場合によっては複数のダミーを混ぜる場合もあるようです。用量応答性の対照選択においても、用量が低すぎて効能のない場合には倫理的問題が起こりえます。逆に毒性が高い有効成分の場合には、毒性が比較的低い低用量の方が離脱しにくくなる場合もあります。利点や問題点はプラセボと類似しています。E4に記載されているように、用量間の差がうまく検出できず、最適な用量の特定が難しい場合もあります。プラセボがない用量応答性研究では効果の確かさを示すことが難しくなります。被験者数はプラセボ対照の並行群間試験などと比べて多くなります。