ICH S10 光安全性の評価 1

ICH S10は非臨床での光安全性評価に関するガイドラインです。光安全性の評価はM3に記載されている内容と、このS10に従います。適用範囲は新規有効成分、添加剤、光治療薬(Photodynamic therapy drugs)です。光安全性研究は光による副作用の発生を防ぐために実施される一連の研究で、光毒性、光アレルギー、光遺伝毒性、光発がん性を含みます。光遺伝毒性、光発がん性に関してはS10での検証の範囲には含みません。光毒性と光アレルギーはS10の範囲内で、それぞれ独立に検証を必要とします。

光毒性・アレルギーに重要な化学的要素として、有効成分が日光の光波長を吸収すること・UV-可視光の吸収により反応性の物質を生じること(活性酸素種など)、皮膚・目などの光が直接当たる組織に分布することの3点があります。3点を満たす有効成分では光毒性のリスクが高まります。光吸収特性として、太陽光波長に対するモル吸光係数が1000 L mol-1 cm-1以上であれば、光毒性の検証を検討することになります。上に記載したように、光を吸収した有効成分は活性化され、エネルギーが酸素に流れることでROS(Reactive Oxigen Species、活性酸素種)が発生することがあります。光安定性が低い物質でも、分解などを通じた光毒性の可能性があります。

有効成分が光の当たる器官に移行すると、光の暴露による上記の反応の可能性が増加します。器官移行量と光毒性の関係は有効成分ごとにことなりますが、メラニンやケラチンなど、皮膚に存在する物質と結合しやすい有効成分は皮膚に蓄積する経口があります。光反応性、皮膚等への蓄積を評価し、リスクを検証します。

有効成分の代謝物での光応答性は通常検証しませんが、代謝により発色団が有効成分と異なるものになる場合には必要となるときもあるようです。光毒性は通常有効成分の薬理学的応答とは独立であるため、薬理学的な検証は難しいようです。ヘムの代謝や免疫系への干渉を通じて光毒性を示す有効成分もあるため、薬理学的に光毒性を発生する場合には通常の薬理・毒理学的研究の範囲で検証します。