ICH S8 免疫毒性研究 1

ICH S8は免疫毒性研究に関するガイドラインです。免疫毒性とは、意図しない免疫の抑制・活性化を指し、免疫抑制・活性化を介しない敏感症や自己免疫を含まないとされています。ガイドラインには免疫毒性の検出法と結果からの意思決定について示されています。意図しない免疫抑制は感染症・ガンに対する耐性を低下させ、免疫の活性化は過敏症や自己免疫性疾患の原因となります。医薬品によっては、医薬品自体に対する免疫を生じることもあります。免疫毒性は2種類のメカニズムにより発生します。1つは免疫系への干渉が医薬品への治療効果となる場合、もうひとつは医薬品が免疫細胞の自死・壊死(ApoptosisとNecrosis)を引き起こす場合です。抗ガン剤は免疫系への干渉の例、抗炎症剤が後者の例となります。ガイドラインの対象はアレルギー、自己免疫を含む非臨床での免疫毒性研究で、主に新規医薬品を対象とします。

免疫毒性の可能性を示唆する要因として、毒性研究での免疫毒性発現、薬理学的に免疫毒性が疑われる場合、使用対象となる集団での必要性(おそらく感染症の治療などを想定していると思われます)、免疫系に干渉する薬剤と類似する物質である場合、薬物動態から免疫毒性が疑われる場合(骨髄などへの蓄積を想定していると思われます)、臨床試験で免疫毒性が疑われる場合などがあります。これらの要因が見つかった場合には非臨床免疫毒性研究を検討します。

標準の毒性研究(Standard Toxicity Studies、STS)で、血球成分の変化・抗体システムに関与する器官の変化・血漿グロブリン量の変化・感染症感染率の増加・ガン発生の増加などが起こった場合には、免疫毒性が疑われます。STSでのリスクを評価し、懸念、疑わしい結果が見られる場合には非臨床での免疫毒性研究を独立に実施します。