日本薬局方-一般試験法 6.10 溶出試験法

溶出試験とは、経口製剤の有効成分の溶解の度合いを確かめる試験のことです。各製剤にそれぞれ規格が設定されており、規格通りに製剤が溶解することで、臨床試験時の製剤との生物学的同等性を担保することを目的としています。試料は最小投与量を用い、普通は1錠・1カプセル、顆粒剤のときは1処方単位を用います。

装置には回転バスケット、パドル、フロースルーセルの3種があります。回転バスケットはバスケット内に製剤を入れ、バスケットを回転させて製剤を溶解させるものです。容器は37℃前後に保ち、1Lの溶出試験液を入れます。回転軸とバスケットはステンレス製のものを用います。パドルは容器に製剤を入れ、パドルで液をかき混ぜるものです。パドルは撹拌翼を2つ持ち、容器の底に試料を沈め、容器内の液をかき混ぜます。温度や溶出試験液の量は回転バスケットと同じです。試料が底に沈まない場合には、シンカーを付けて沈めることができます。フロースルーセルは製剤を筒状のセルに入れ、液を流すことで溶解させる装置です。液は4-16mL/分の流量を流すことができるポンプを用います。ポンプは正弦波の脈流を持ち、端数は120/分となるようなものを用います。セルに錠剤を入れた後、上端にフィルターを付け、下から上に液を流して錠剤を溶解させます。

どの装置においても、装置が適切な機能を有していること(適合性)を定期的に確認する必要があります。装置の寸法、温度、用量、回転速度、流量などを確認した後に使用します。

回転バスケット法とパドル法はほぼ同様の操作で扱います。錠剤や試験液を準備し、バスケット・パドルを回転させます。試験液は20-25℃での液量をはかり、pHを規定の±0.05以内に調整しておきます。各条に規定された時間に液を取り、試料液とします。複数点の測定が必要な場合には、取った液の量の分だけ溶出試験液を足すか、取った分だけ計算で補正します。試料液に含まれる有効成分の量を測定し、溶出率を計算します。試験時間と試験液には製剤のタイプにより違いがあります。即放性製剤では溶出試験液2液で1時点の測定、徐放性製剤では同様に2液で3時点測定となります。腸溶性製剤では酸性の1液と中性の2液をおm値います。1液の試験時間は錠・カプセル剤で2時間、顆粒剤で1時間です。

フロースルーセルについても試験方法や試験液はパドル法・回転バスケット法と同様です。セルにはガラスビーズ(おそらく逆流を防ぐ)を詰め、その後試料を入れます。フロースルーセルの底部から液を流し、規定時間ごとにサンプリングを行います。フロースルーセルは自動化されたものが多く、普通はオートサンプラーでのサンプリングが行われます。

判定基準は2種類あり、Q値(規定の有効成分溶出率)が設定されている場合には判定法1、そうでない場合には判定法2を用います。判定基準も製剤のタイプにより異なります。即放性製剤の判定法1では6錠試験し、全錠Q+5%の溶出率を持つなら適合(S1)です。不適合の場合は更に6錠試験し、規定を満たせは(S2)適合、そうでなければさらに12錠試験を行います。判定法2は各条にしたがう方法です。12錠までの試験しか行いません。徐放性製剤・腸溶性製剤の規格は複雑ですが、6錠、6錠、12錠と適合でない場合には24錠まで試験数を増やすことができる点は同じです。腸溶性製剤では試験液1(酸性の液)で溶出しないことが条件となります。