日本薬局方-一般試験法 3.02 比表面積測定法

比表面積とは、粉体の体積あたりの表面積のことです。比表面積測定法では、粉体の表面に吸着される気体の量から粉体の表面積を求めます。粉体にはファンデルワールス力(近距離にある分子同士にはたらく引力のこと)により気体が吸着します。この気体の吸着は液体窒素の沸点(-196℃、通常の気温に出した液体窒素はほぼ沸点の温度になる)付近で測定します。気体の吸着量は動的流動法、もしくは容量法と呼ばれる方法で測定します。

吸着量の解析はBrunauser, Emmett, Teller(BET)の吸着等温式というものを利用して行います。この数式では、試料と平衡状態にある吸着気体の分圧、吸着気体の蒸気圧の比に対して、吸着気体体積の逆数が直線的に応答することが示されています。したがって、平衡状態にある吸着気体の分圧、吸着気体の蒸気圧の比を数点取り、吸着気体量を調べることでこの直線を求め、その傾きと切片を求めることができます。傾きと切片から試料表面で単分子層を作る吸着気体の体積(表面積を反映する)を求めます。さらにこの吸着気体の体積から計算により比表面積を求めます。平衡状態にある吸着気体の分圧、吸着気体の蒸気圧の比を数点取る方法を多点法と呼びます。計算に用いる定数Cが十分に大きいとみなせるとき(おそらく気体層が2層以上にならないとき)には、比を1点だけ取って比表面積を求める、1点法を用いることもできます。

試料の調製時には、吸着気体以外の気体を含ませないよう、適切な脱気条件を設定する必要があります。脱気の方法にも複数ありますが、吸着気体には水分を含まないことがどの方法においても条件となります。

動的流動法は窒素/クリプトンを測定気体、ヘリウムを希釈気体として用いる方法です。試料を密封し、気体を流し込みその流量を測定します。試料に気体が触れた状態で試料を液体窒素温度にすると吸着が起こり、吸着分だけ流量が減ります。その後、試料温度を上げると脱着が起こり、脱着分だけ流量が増大します。この流量の増減を利用して気体の吸着量を求める方法が動的流動法です。

容量法は窒素を吸着気体として用いる方法です。試料を減圧、冷却し、窒素をある平衡状態にある吸着気体の分圧、吸着気体の蒸気圧の比を達成するまで導入します。導入した窒素量を測定し、吸着気体の体積とします。

比表面積の標準物質にはアルミナ(酸化アルミニウム)を用います。正確な比表面積の測定のために、装置の稼働の適格性を標準物質を用いて定期的に確認する必要があります。