日本薬局方-一般試験法 2.47 浸透圧測定法

浸透圧とは、水の濃度が高い(溶質が少ない)ところから、水の濃度が低い(溶質が多い)ところへと水が移動する圧力のことを指します。普通に濃度の異なる溶液同士を混ぜると濃度は均一になるため、この浸透圧は観測できませんが、間に浸透膜があると、溶質は移動できず、溶媒(水)のみが移動できます。この移動の圧力を浸透圧と呼びます。しかし、浸透膜を準備し、濃度の異なる溶液を揃えても、浸透圧を正確に測定することは困難です。そこで、日本薬局方では浸透圧の測定法として凝固点降下を利用します。凝固点降下とは、溶質の濃度(正確にはイオンの濃度)に比例して、水の凝固点が低下する現象のことです。溶質の濃度と凝固点の低下が比例するため、凝固点を測定すれば、イオンの濃度(オスモルと呼びます)がわかります。

浸透圧の測定装置は、試料を過冷却し、振動で氷結させたときの凝固熱による温度変化を測定します。過冷却は、凝固点の温度以下になっても水が凍らない現象です。この過冷却は振動によって解消されます。過冷却された水を振動させると、急速に氷結が起こり、その際に水の凝固熱が発生します。凝固熱が発生し、水と氷の相が平衡状態にあるとき、その温度は凝固点と同一になります。装置には適合性の確認が必要です。測定前に、試料と近い濃度の標準液を6回測定し、再現性が2.0%以内、規定のオスモルとのズレが3.0%以内であることを確認します。標準液としては、塩化ナトリウム水溶液を利用します。

浸透圧が体液と等張であることは、医薬品(注射剤、透析に用いる製剤、目に適用する製剤)にとって非常に重要です。体液との等張性を示すために、浸透圧比を求めることがあります。浸透圧比は試料のオスモル濃度と生理食塩水のオスモル濃度(286 mOsm)の比のことで、浸透圧比が1であれば、試料は体液と等張であることになります。