GMP省令-キャリブレーション

キャリブレーション(校正)とは、計器(測定器)が示す測定の値と、標準の値の関係を確定する作業のことを指します。つまり、計器で測定している値がどれぐらいきちんと正確であるか調べる作業を校正と呼びます。校正は、計器の値が標準の値からずれているからといって、計器を修理して同じ値を出すよう変更する、というものではありません。差を調べることが校正です。

真実の値とは、基準器と呼ばれるものが指す値のことです。基準器には、分銅や温度計、時報やストップウォッチなどがあたります。ただし、通常の分銅や温度計、ストップウォッチであれば、使用しているうちに値がずれる(擦り切れたり、くるったりする)ことがありえます。基準器の示す値が真実の値であることを示すためには、トレーサビリティーという概念が必要となります。

トレーサビリティーとは、基準器の値をより正確な基準器で連続的に校正することを指します。例えば分銅をより正確な基準分銅で校正することで、分銅の示す値が基準分銅と同じであることを保証します。同様に、基準分銅をより正確なキログラム原器で校正することで、基準分銅の示す値がキログラム原器と同じであることを保証します。この結果、分銅の示す値がキログラム原器と同じであることが保証されます。正確な分銅ほどより高価です。特にキログラム原器は数がほとんどありません。正確な値を示す基準器を十分な数準備し、校正を行うためにトレーサビリティーは重要な働きを持ちます。

最も正確な値を示す基準器のことを国家計量標準と呼びます。国家計量標準は国が決めた計量器の基準のことで、その示す値が正確であることを国が保証しています。以前は国家計量標準として具体的なもの(メートル原器やキログラム原器)が使用されていましたが、ものを使用するとその重さや長さが環境により変わります。現在では、ものを標準とするのではなく、温度や場所で値が変化しない、物理学的な基準が国家計量標準として定められています。

計量は正確である必要があります。ものを取引する時に、そのものの重さが信用できなければ誰も取引をしようと思う人はいないでしょう。計量は取引の基本であるため、経済産業省管轄の法律である、計量法にその詳細が規定されています。

計量法では、計器に使われる単位、計器の製造や販売の許可、校正や検定の方法、基準器の製造販売や校正の方法が定められています。

GMP省令上では、第10条に製造機器の校正、11条に試験測定器の校正についての規定があります。ともに計器を適切に校正すること、校正の記録を文書として作成し、保管することが定められています。

キャリブレーションにはいくつか種類があります。検定や検査は計量法で規定された校正で、それぞれ計器の製造時、自治体が行う校正を指します。製造所で行う検定には定期校正(1年や半年ごとに実施する校正)、日常校正(毎日使用前に行う校正)、不定期の校正(計器を修理・導入する時に行う校正)などがあります。

キャリブレーションの対象となるものは、製品品質に影響を及ぼしうる計器で、はかりやノギス、温度計、試験測定器などがあたります。

キャリブレーションに関しても他のGMP上の規定と同様に、手順書や実施計画書・記録書が必要となります。校正された計器にはその製造所で発行する校正済之証を発行し、貼り付けるのが一般的です。計量法に基づいた正式な校正を実施した場合には、JCSSという校正に関する団体に所属する事業者が発行した、校正証明書がつけられます。