皮膜4
皮膜工程は錠剤表面に薄いフィルムを形成し、錠剤や有効成分を保護し、外観を良くするための工程です。4では皮膜の品質に影響を与える熱交換などについてまとめています。皮膜の品質では、スプレー中の熱交換とスプレー自体が重要な因子になります。熱交換は送風量、送風温度、錠剤温度や湿度、スプレーは距離、ミスト径、スプレー液量が重要な要素となります。錠剤が適切にかき混ざり、均一にスプレーがかからないと品質のよい皮膜は形成されないため、スプレーが当たる錠剤の流動面や流動の様子も重要となります。
皮膜の熱交換は給気による熱の供給、排気による熱の排出、溶媒の潜熱と皮膜機の熱効率によって決まります。給気と排気の熱は風量と温度から計算でき、錠剤にはその熱量の差の分だけ熱が加わります。スプレーの量に依存してスプレー溶媒の潜熱(蒸発熱)が失われます。皮膜機から熱が漏れるため、皮膜機には固有の熱効率があります。これらの熱の供給と排出のバランスを取ることで、錠剤温度を一定に保ちます。
送風は錠剤温度を維持しつつ、スプレー液を乾燥させるために必要です。送風量が多いほど、送風温度が高いほど乾燥しやすくなります。風量が大きくなりすぎるとスプレーのパターンに影響を与えてしまうため、スプレー量に合わせて送風を設定するのが普通です。錠剤温度は熱交換の結果として達成される値です。送風による温度変化はゆっくり起こり、スプレーによる温度低下は速く起こります。皮膜が粘着性のときは錠剤間で付着しやすくなるため、乾燥気味に温度を高めに設定します。一方で乾燥させすぎるとスプレーが粉状になってかかるため、緻密さが失われます。
錠剤の流動はドラムの回転速度、仕込量、バッフル(邪魔板)、錠剤形状の影響を受けます。錠剤の上面が十分に流れ、かき混ざるような回転速度を選択して皮膜を行います。流れがスムーズでない場合には錠剤にかかるスプレー量にばらつきができるため、最終製品の皮膜にもばらつきが出ます。回転速度を早めることで錠剤の流動は良くなりますが、回転速度を高めすぎると錠剤の割れや欠けが起こりやすくなります。
スプレー速度(スプレー液量)はガンの性能、生産効率、乾燥能力などにより決定します。ミスト径は皮膜液が高粘度で、液量が多くなるほど大きくなります。大型の皮膜機では通常複数のスプレーガンを用いますが、このような場合にはスプレーがかかる場所が重ならないように設定します。スプレーの当たる位置の間に12-20cm程度、スプレーが当たらない場所を確保すると良いようです。スプレーエアが強すぎると錠剤が跳ねるため、あまりスプレーエアを高めすぎるのもよくないとされています。
スプレーのミスト径はそのばらつきが小さいほどよいとされています。大きい径の液滴があると、大きな濡れが発生し、不良錠の原因となります。皮膜液の粘性が高いと径が大きくなるため、適切な皮膜液の粘性を持つようにします。ミスト径は250μm以下となるのが良いようです。
スプレーのパターン(スプレーの噴出する面積や形)が広いほど、皮膜液量は高くできます。錠剤にスプレーが当たる面積が重要で、広いとたくさんの錠剤に一度に少量ずつ吹き付けることができるようになります。面積はスプレーを離すと大きくなりますが、離しすぎるとスプレーが掛かる前に乾燥する、スプレードライの状態になりやすくなります。パターンエアの強さやガンの配置も重要な要素となります。