皮膜5

皮膜工程は錠剤表面に薄いフィルムを形成し、錠剤や有効成分を保護し、外観を良くするための工程です。5では皮膜の品質に影響を与える錠剤の特性などについてまとめています。

皮膜では、錠剤の欠けやすさや重量のばらつき、安定性や配合性、形や刻印、錠剤の空隙率や崩壊性などの錠剤自体の特性によって品質への影響が現れます。錠剤の形状は錠剤のかけやすさと流動性の良さに影響を与えます。欠けやすい錠剤では角が削れ、丸まりやすくなります。特に仕込み量が多い場合には錠剤質量の影響でより欠けやすくなります。錠剤のかけやすさは回転式の欠けの評価機で行うのが一般的です。錠剤質量のばらつきは皮膜が乗っている量を正確に把握するために必要で、ばらつきが大きいとどれだけ皮膜が乗っているのか把握しにくくなります。

錠剤は皮膜中の溶媒、温度に対して十分に安定である必要があります。特に皮膜中の錠剤温度での安定性、水との配合性や分解の可能性が重要な要素となります。皮膜成分では特に可塑剤との反応が起こることが多いため、可塑剤と有効成分の配合性、皮膜成分間の配合性を検証しておく必要があります。

錠剤の形状は角が尖っていて、刻印が深いほど皮膜が難しくなります。角が尖っていればドラム内でかけやすくなります。通常皮膜に用いる錠剤は転がりやすい形状をしている方がよいとされています。刻印が深いとブリッジング(皮膜と刻印の溝の間に隙間ができること)が起こりやすくなり、逆に浅いと刻印が皮膜で埋まってしまって、刻印が見えなくなります。

錠剤表面の空隙率も重要な要素であるとされています。空隙が多いと皮膜がよりつよく錠剤と接着し、皮膜が剥がれにくくなります。空隙が低い錠剤では接着性の高い基剤が必要となります。崩壊性が低い錠剤では、皮膜による溶出遅延が大きくなるようです。

皮膜液の性質も皮膜の品質に大きな影響を与えます。皮膜の基剤の強度が低いと剥がれや割れの原因となります。特に錠剤の角から剥がれが起こります。色素や沈殿成分が多いと皮膜の強度は下がります。可塑性が低すぎても皮膜の割れの原因となり、高すぎても皮膜の形成不良の原因となります。

色素量が少ないと色はばらつきやすくなりますが、濃度が高いと皮膜は力学的に弱くなります。色素のうち、酸化チタンのような沈殿成分が少ないと皮膜の乗りが遅くなり(重みがある成分が少ないため)、逆に濃度が高いと粘度が高くなり、膜の緻密さが低下します。沈殿物がある場合には適切に分散・撹拌しないと皮膜のばらつきの原因となります。

皮膜液の粘度はスプレーミストの径に影響を与えます。特に200-250cpを超えるとミスト径の分布が広くなり、皮膜に適さなくなります。アトマイジングエアを高めればミスト径は小さくなりますが、350cp以上の粘度を持つ皮膜液は皮膜には適さないとされています。