皮膜3

皮膜工程は錠剤表面に薄いフィルムを形成し、錠剤や有効成分を保護し、外観を良くするための工程です。3では皮膜に用いるスプレーと皮膜工程の過程についてまとめています。

皮膜に用いるスプレーは、スプレーノズル、ポンプ、タンクから成ります。チューブはタンクからポンプユニット、スプレーへと結合されていますが、ポンプの後でリターンと呼ばれるタンクに戻るチューブが別途接続されています。ポンプは常時動かし、スプレーを出さないときにはポンプで送られた液はスプレーノズルへと送液されずに、リターンを通ってタンクに戻るような仕組みになっています。通常スプレー量は流量計で測定します。タンク内は常に撹拌し、分散物(主に酸化チタン)が沈殿しないよう維持します。

スプレーユニットは空気により皮膜液をミストにするものです。この空気はアトマイジングエアと呼ばれ、エアの量や速度によってミストの粒子径が変化します。ドラムは横方向に回転し、スプレーから流動層までの距離は回転の軸方向に等しくなっているため、スプレーの吹く範囲や形状は回転軸方向に変形させている方が錠剤に均一にスプレーが吹きかかります。このようにスプレー形状を変化させるための送風をパターンエアと呼びます。

スプレーのポンプにはギアポンプ、チューブポンプ、ローブポンプなどが用いられます。通常1-7気圧程度の圧力を生み出すことができるよう設定されているようです。チューブポンプが最も安価で管理も簡単であるため、最もよく使用されます。ポンプの圧力が高すぎると液漏れやチューブが外れるようなトラブルが起こりやすいため、低めの圧力で押し出すほうが良いとされています。ポンプによる脈動がおこることや、チューブ内に空気が入ることでスプレーのトラブルが起こることもあります。

スプレー量を測定するのは、通常液中の熱移動を測定することで流量を測定するマスフローメーターというものが用いられます。流量に応じてポンプ圧力を自動制御することで流量を安定させる仕組みが通常は皮膜機に備わっています。

皮膜工程は工程パラメータが確定し、状態が安定していれば自動化することもできます。通常は皮膜機のPCにパラメータをあらかじめ入力し、自動運転させることになります。

皮膜機購入後、製造を安定させるために皮膜機のサイズや仕込量の範囲を確認します。スプレー距離が近すぎず、遠すぎない最適な仕込量をあらかじめ確認しておきます(通常は最大仕込量の75%ぐらいまで使用できるようです)。錠剤の流動、スプレーから錠剤までの距離が重要な要素となります。大型の皮膜機には複数のスプレーノズルがついているため、個々のスプレーノズル間の液量、風量が均一となるよう設定します。均一であること、ミストが最適な形状・サイズを持つことはミストチェッカ(普通は網やフィルムで、液がついたらわかるようになっています)で確認しておきます。

錠剤をドラムに投入後、まず送風し、錠剤をゆっくりかき混ぜながら予熱します。予熱しないと錠剤の表面が濡れた状態から皮膜が始まることとなり、核となる錠剤に水分が吸収されることもあります。最適な温度まで予熱されたらスプレーを開始します。皮膜と錠剤の成分によってはまず下層のフィルムを形成します。下層フィルムにより配合性の悪い皮膜成分が有効成分に触れるのを防ぐことができます。引き続き皮膜工程を継続し、望ましい重量になるまでフィルムを巻いていきます。通常温度が低いと濡れやすく、皮膜は緊密になりやすく、高いと乾燥し、疎な皮膜になります。皮膜液の減りや錠剤重量の増え方から皮膜の効率を測定しておくことで、以降の製品での皮膜液準備量を最適化することができます。皮膜の表面の質によっては、見た目を良くするための上層を追加することもあるようです。錠剤重量が目的の値に達したら、スプレーを完了します。完了後に温度を上げ、一度乾燥させ、その後冷却します。冷却後20-30ºCまで温度が下がったら、粉末のカルナウバロウ(ワックス)を100kgに5-10gふりかけます。5分ほど送風せずに回転させ、ワックスを錠剤表面に行き渡らせ、錠剤の滑りを良くします。ワックスをかけた後、ドラムを逆回転させ、錠剤を取り出します。