日本薬局方-一般試験法 4.02 抗生物質の微生物学的力価試験法

抗生物質とは、細菌などの生物の増殖・成長を抑える物質のことです。抗生物質の力価測定とは、抗生物質による抗菌活性を培地上での菌の増殖抑制から判定するものです。試験用の菌を播種した寒天培地を準備し、寒天培地の一部に抗生物質を置きます。抗生物質が置かれた周辺では、その抗生物質の抗菌活性にしたがい、菌の増殖が抑えられた円状の部分(阻止円)が観察できます。この阻止円の面積から、抗生物質の力価を求めます。

試験に用いる培地・方法・試験菌には様々なものが設定されています。培地は試験菌に応じて準備し、使用する器具はあらかじめ滅菌しておきます。抗生物質を置く方法として、円筒平板法、穿孔平板法があります。

試験菌には主に2種類を用います。1つはBacillus subtilisで枯草菌の仲間、もう一つは出芽酵母です。培地はそれぞれに適したものを寒天培地として作成します。寒天培地はオートクレーブして滅菌した後、シャーレなどに広げます。用いるシャーレにはペトリ皿と、試験管を斜めにしたものを利用します。ペトリ皿に入れたものを平板培地、試験管に斜めに入れたものを斜面培地と呼びます。

試験用の菌液にはBacillusの芽胞(休眠した菌のこと)と培養した出芽酵母を用います。ともに継代培養し、水や生理食塩水に懸濁したものを用います。培地は2層構成で、菌を含まない基層と、菌を混ぜて広げる種層からなります。培地を一定温度で温めておくことで、菌は培地上で増殖します。

抗生物質を培地上に配置するため、培地に円筒を置く円筒寒天平板と、穴を開けた穿孔寒天平板を作成します。この円筒内、穿孔内に高濃度、低濃度の抗生物質試料を入れ、培地を32-37℃で温めることで菌を培養し、阻止円を形成させます。阻止円の直径から力価を計算して求めます。

寒天培地を使わずに液体培地での菌の増殖を調べる方法(比濁法)もあります。生物学の試験では比濁法により菌の増殖を測定することがより一般的です。試験管で菌を抗生物質試料とともに培養し、培養後菌をホルムアルデヒドで固定し、530nmの光吸収から菌の増殖度を調べます。比濁法では抗生物質の標準溶液で検量線を作成し、力価を求めます。