日本薬局方-一般試験法 2.49 旋光度測定法

旋光とは、光の波の方向が物質を透過することにより回転する現象のことです。この回転の角度は、その物質に含まれる光学異性体に依存し、回転の角度のことを旋光度と呼びます。光学異性体とは、同じ化学構造を持つが、立体配置が異なるもののことを指します。炭素は4つの原子と共有結合をもち、その4つの原子は4面体の頂点に配置されます。4つの原子の種類がすべて異なる場合、化学式は同じでも立体的な配置が異なるものが生じます。この立体的な配置が異なるもの同士のことを光学異性体と呼びます。例としてアラニンをとると、アラニンにはL型とR型があります。2つの光学異性体は立体的な配置が異なるため、完全に同一になることはありません。化学物質としての性質はL型、R型でほぼ同じですが、医薬品では、どちらか一方の光学異性体のみが薬理活性を持つことがあります。アミノ酸の場合、人体を構成するタンパク質に用いられているのはL型のみです。このような光学異性体では、旋光の角度は同じですが、旋光の方向が逆になります。片方が時計回りに回転すれば、もう一方は同じ角度で反時計回りに回転することになります。

旋光度は、偏光板を用いて測定します。一般的に光は様々な方向を向いた波の集合からなります。偏光板は、これらの波のうち、1つの方向を向いた光のみを透過する板です。2枚の偏光板の角度を変えることで、透過光の強度は変わります。この偏光板の角度から旋光の度合いを測定します。旋光の方向は右回転を+、左回転をーとします。旋光度は光の波長、温度の影響を受けるため、測定は20-25℃、ナトリウムD線もしくは水銀ランプを光源として測定します。試料は100mmの厚さに調整します。旋光度は、既定値と比較して物質を特定する・もしくは測定値をそのまま示すことで、不純物などの性質を調べます。旋光度の表示には2種類あり、1つは比旋光度、もう一つは旋光度です。上記の角度は旋光度で、測定する温度と波長が規格などには記載されます。比旋光度は試料の濃度、層長あたりの旋光度のことです。比旋光度の規格は鉤括弧でくくり、旋光度と同様に測定温度と波長が記載されています。