打錠3

打錠は粉体を圧密し、錠剤にする工程を指します。3では、打錠障害についてまとめています。打錠障害とは打錠における製品不良の問題を指し、そのタイプにより様々な名前がついています。スケールアップによる回転速度上昇では、通常ほとんどの打錠障害が起こりやすくなります。

スティッキングは打錠杵に粉が付着し、錠剤表面から粉を剥がしてしまうことで錠剤表面に剥がれた跡が残ることです。粉が細かく、付着性であれば起こりやすくなります。滑沢剤の量や混合度合いが不適切な場合にも起こります。粉が細かい場合には造粒状態を変えることで改善される場合もあります。杵には様々な表面加工を施すことができるため、費用に余裕があれば杵の表面加工で対処することも可能です。

バインディングは杵ではなく臼に粉体が付着し、錠剤の壁面(側面)に摩擦が生じることを指します。通常錠剤の側面に縦線が入ることでわかります。臼の内壁に粉が付くため、粉の挿入や引抜きに掛かる力が増大し、ひどい時は打錠杵が引き抜けずに打錠できなくなったりもします。粉の付着性や臼の材質が原因となるため、臼材の変更や造粒状態の変更で改善できることもあります。

キャッピングやラミネーションは、錠剤内部に圧縮空気が残ることで、錠剤面に平行な線で割れやすくなることを指します。線にそって割れやすくなることをラミネーション、表面が割れて剥がれることをキャッピングと呼びます。打錠速度が速く、予圧の調節がうまく行っていない場合には圧密時に空気が抜けず、キャッピングしやすくなります。テーパー臼の使用や、打錠速度・予圧の調整で制御できる場合もあります。

クラッキングは錠剤に割れが発生することで、通常それほど見ることはありませんが、錠剤の弾性変形力(圧密後に元の形に戻ろうとする力)が大きいと割れることもあるようです。弾性変形が残るのは粉体の性質にもよりますが、圧密時間と圧密にかかる力が足りない場合が多いため、打錠の回転盤回転速度を下げることで対処できます。

ピッキングは錠剤の表面に剥がれが生じて、穴ができることを指します。刻印錠の島抜けなどが代表的です。原因はスティッキングや刻印のデザインにあります。刻印のデザインの見直し、造粒状態、滑沢剤混合などを調整することで対処できます。

チッピングは錠剤の角がかけることを指し、排錠時に角にストレスが掛かることが原因で起こります。スティッキングにより錠剤の角が剥がれている場合もあります。錠剤形状を丸めたり、造粒、杵の表面処理などで対処します。錠剤の角欠けの問題は打錠だけでなく、皮膜工程でも起こるため、皮膜錠では角が丸まった錠剤が選択されます。