打錠1

打錠は粉体を圧密し、錠剤にする工程を指します。通常はロータリー式の打錠機と呼ばれるものを使用し、粉体を下杵、上杵、臼で挟んで圧密することで錠剤にします。ロータリー式打錠機は粉体を供給する部分、回転して打錠を行う部分、打錠後の錠剤を排出する部分からなります。供給部が杵臼に粉体を供給し、回転打錠部で圧密する形となります。このあたりはI-Holland菊水製作所のホームページにわかりやすく記載されています。

品質のよい錠剤を打錠するためには、粉体の性質が重要となります。粉体の流動性が低いと杵臼に粉体が適切に供給されないため、質量変動などの原因となります。圧縮成形性の悪い粉では、打錠に高い圧力が必要になったり、錠剤が欠けたり割れたりしやすくなります。錠剤は圧密するため、水への溶解性が粉体より下がります。適切な溶解性を持つ錠剤を製造するためには、錠剤が崩壊しやすかったり、有効成分が溶けやすくなるような工夫が必要となります。

打錠のツール(Toolings)として、上杵・下杵・臼があります。ツールは錠剤形状を決定し、打錠の圧力の最大値に影響します。適切な形状・力学的な強さ・表面処理・材質などが粉体の付着性や耐久性に影響します。通常錠剤の形状は製造の容易さや錠剤の機能だけではなく、営業部門が売りやすい特徴を持つ必要があるため、営業・研究・製造部門の合意の下で決定されます。

ツールの規格はUSの規格であるTSM(IPT)とEU規格であるEUの2タイプがあります。日本ではTSMが主流で、EUの規格はI-Hollandが配布しているようです。杵にはBタイプとDタイプがあり、それぞれ胴の部分の太さが異なります。

杵にはレリーフと呼ばれる出っ張りがついています。この部分により、臼にくっついた粉体を取り除くとされているようです。取り除くためには鋭い角度を持つほうが良いとされていますが、実際の臼への付着性は粉体の特性によることが多いと思われます。臼表面やレリーフ表面の加工等により、摩擦係数が下がっていれば付着は小さくなりやすくなります。

杵のキーは、杵の回転を防ぐためにつけられている金具を指す言葉です。両面刻印や楕円錠では、上下の臼の位置や方向が重要となります。円形の錠剤では杵が回転する場合が多いと思いますが、両面刻印・楕円錠では回転せず、上下の形状が合うように、キーによって杵の回転が防がれています。

テーパー臼は、臼の穴の上下がやや広くなっているものを指します。圧密するときに空気が逃げやすいため、錠剤内に圧縮された空気が残って起こる錠剤の割れ(キャッピング)を防ぐことができます。高速打錠を行うときや、カップ(錠剤の上下面の曲率)が深いときには有用となります。

杵臼のデザインは、打錠に必要となる圧力により決まります。打錠に高い圧力が必要であれば、強い力がかかっても欠けたりしない、力に強いデザインを取ることになります。錠剤の曲面(カップの深さ)が深いほど、打錠圧力による破壊を受けやすくなります。通常皮膜錠では錠剤がうまく転がる、角が丸いデザインを選択します。打錠に問題が起こりにくいため、通常円形の錠剤が製造では好まれますが、楕円などの錠剤も多く存在します。

カップにもいろいろ種類があり、1つの角度で形成されているものや、2つ以上の角度を変化させてあるものなどがあります。カップが深いほど錠剤は小さく見えやすくなります。2つ以上の角度を持つと体積を大きくすることができますが、通常このような錠剤はカップが深くなり、キャッピングや耐久性の問題を持つことになります。