打錠2

打錠は粉体を圧密し、錠剤にする工程を指します。2では、錠剤の形状やToolingsについてまとめています。

錠剤への標識は錠剤印刷や刻印によって行います。印刷技術がなかった時代には刻印が主流でしたが、現在は印刷錠が増えていると思われます。錠剤が小さいと刻印は難しくなり、刻印部分、特に島(0や6、8などの丸部分)が抜けることがあります。抜けを防ぐためには刻印の幅(太いほうがよい)、フォント、刻印の溝の形状に工夫が必要となります。割線は錠剤を割って使用するための線を指します。刻印と同様に、割線も錠剤に溝を作ることで成形します。処方量を上材料の半分にしたいときに有用で、調剤時に好まれる傾向があります。通常上杵に割線をつける場合が多いようです。

Toolings(臼杵)の鋼材は杵臼の付着性・耐久性・耐錆性を決定する重要な要素です。通常普通鋼材と高価な改良鋼材から選択することになります。改良鋼材は耐久性や付着性に有用な特徴を持ち、高い打錠圧力に対しても破壊が起こりにくい場合が多いです。臼にもより硬い鋼材を用いる場合があります。共に耐久性等に高価があるため、費用対効果を検討して採用することになります。

マルチティップ杵臼は、一本の打錠杵に複数の杵先がついているものを指します。海外では一般的に使用されており、一度に複数の錠剤を製造することができるため、効率的な生産に貢献します。杵先面積が経るため、通常錠剤は小さく設計します。杵先だけ交換できるものもありますが、構造が複雑となり、清掃やメンテナンスに特殊な工夫が必要になります。杵と臼の接触面積が大きくなるため、摩擦熱が大きくなる問題もあります。

打錠圧力は杵臼の決定に大きな影響を与える因子です。圧力自体は杵臼ではなく、製剤の特性によって決定します。通常打錠圧力が高くなると溶解性が下がり、錠剤の硬度は上がります。製剤の特性によって打錠圧力が決まると、打錠圧力に合わせた杵臼を準備することになります。杵の製造元が杵臼の耐久打錠圧力を示している場合が多いため、その打錠圧力を元に、余裕のある杵臼を選択することになります。

杵臼の保守もその寿命を延ばし、製品品質に悪影響が出ないようにするためには重要な要素です。使用前・使用後に破損等をチェックし、杵先が欠けないよう包装の方法についても維持管理します。洗浄は専用の洗浄機を用いて行い、水分などによる錆を防ぐ必要があります(通常は食用油を表面に塗布することになります)。状態が疑わしい杵は交換や製造元によるメンテナンスが必要となります。

杵臼の購入に際しては、杵臼の図面確認、錠剤形状の確認を事前に行います。依頼したデザインに応じて製造元が作成した杵の図面、錠剤サンプルを確認し、承認を取ります。承認後に契約、購入、納入と移行していきます。契約から90日以上かかるのが一般的なようです。

打錠は基本的にスケーラブルなので、スケールアップ時は何もしなくても製造することはできますが、生産効率向上のために打錠の速度を上げることがあります。打錠の速度を上げると重量の均一性や錠剤の硬度が下がるため、適した打錠圧力や打錠速度の検討が必要となります。

打錠での圧力は基本的に2回かかる構造になっていて、それぞれ予圧、本圧と呼ばれます。予圧では粉体から空気を抜き、ある程度の形に圧縮成形します。本圧で錠剤を押し固め、製品の錠剤形状を成形します。予圧はキャッピングなどの打錠障害と関与しているため、打錠の重要な要素となります。本圧は錠剤の厚み、溶解性、硬度を決定する要素となります。

打錠では粉体や原料の弾性、可塑性、硬度が重要となります。圧をかけた後に形が戻ることを弾性変形、圧により形が不可逆に変形することを可塑性と呼びます。可塑性が高く、弾性が低い粉体ほど成形性が良くなります。可塑性は錠剤硬度や打錠障害などに影響し、打圧や加圧時間、粉体の可塑性の影響を受けます。