コンピュータ化システム 概要

コンピュータ化システムについては、コンピュータ化システム適正管理ガイドラインに詳細が記載されています。

コンピュータ化システム適正管理ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb6573&dataType=1&pageNo=1

ガイドラインの序文には目的が記載されていますが、この目的からはイマイチ何をするのか、よくわかりません。そもそもコンピュータ化システムとは何を指しているのでしょうか?

コンピュータ化システムとは、コンピュータや電子基板を用いた、プログラムを用いる電子機器のことを指します。コンピュータ化システムにはパソコン上で動くソフトウェア、PLCと呼ばれるロジックボード(特定の動作を自動化する電子機器のこと)、パソコンにつながった測定機器(HPLCなど)を指します。GQP・GMPでは、これらのコンピュータ化システムのうち、① 基幹システム(OS)、② PLC、③ 文書作成のためのソフトウェア、④ 医薬品の品質に影響を与えうるソフトウェア を主な対象とします。製造機器の一部や、試験機器、指図やデータベースを作成するソフトなどがこれにあたります。

基幹システム(OS)はわからない方はほぼいないと思います。WindowsMacOSLinuxなどPCに使われるもの、AndroidiOSなど、携帯電話やタブレットに用いられるものがOSにあたります。

GQP、GMP文書を作成するソフトウェアには、上で述べたように文書そのもの(例えば指図)を作成するソフトウェア、文書の電子承認を行うソフトウェア、文書の保管を管理するためのソフトウェアやデータベースなどがあたります。

医薬品の品質に直接影響があるシステムについても、コンピュータが使われていればこのガイドラインの対象です。製造機器を自動調整するシステム、精製水の管理システム、試験測定器の調整アルゴリズムなど、広範な設備・機器において、コンピュータが用いられています。

コンピュータ化システムにはカテゴリを設定する必要があります。カテゴリ1はOS、カテゴリ3は商用ソフトウェア(買ったものをそのまま使用する場合)、カテゴリ4は商用ソフトウェアに少し手を入れた場合、カテゴリ5は自社開発など、プログラミングを行って作成したものを指します。一般的に商用ソフトウェアでは、その動作検証が開発元企業によって厳重に行われています。したがって、商用ソフトウェアをそのまま使う場合には、動作を検証する必要性は少なくなります。プログラミングを自社で行う場合には、この動作検証を自社で行う必要があります。したがって、カテゴリが1から5に近づくほど、医薬品企業での動作検証作業は多く、複雑になります。

コンピュータ化システムにおける検証項目は、システムの開発元、医薬品企業それぞれに分配して行われます。まず、医薬品企業が開発元企業にソフトウェア・システムの開発を依頼します。開発元企業ではこの開発依頼に応じて開発計画が立てられ、システム開発が行われます。システム開発が終われば開発元は適切に動作を検証し、医薬品企業に納入します。医薬品企業は開発計画・開発中・納入時に適切に適格性評価を実施することで、医薬品の品質に問題が起こらないことを多重に検証します。バリデーションの完了後、そのシステムは医薬品企業で運用されます。

開発元側の検証項目は、開発計画書(開発前)、要求仕様書・機能仕様書・設計仕様書(開発初期)、テスト・受入試験(開発後)になります。この各段階でシステムの動作を検証し、システムが問題を起こさないことを明らかにします。

医薬品企業側では、開発前にバリデーション計画書を作成し、適格性評価のプランを策定します。開発初期に要求仕様書・機能仕様書・設計仕様書をそれぞれ評価し、適格性評価の報告書を作成します。開発後、納入時に再度適格性評価を行い、運用に問題がないことを調べます。適格性評価の結果はすべて文書として記録し、保管します。

システムの運用時には、基本的にはコンピュータではないシステム(設備・機器)と同じ運用を行います。設備と同様に点検を行い、変更・逸脱・自己点検・教育訓練の管理をGMP上のシステムとして実施します。

システムでは一般的にデータを取り扱います。データを取り扱うため、取り扱わない設備とは異なる運用を行う必要があります。データの消失を防ぐためのバックアップ、データの流出を防ぐためのセキュリティの管理、データを残したまま廃棄することを避けるための廃棄の管理が求められます。