ICH S11 小児治療用医薬品の非臨床試験 1

ICH S11は小児医療用医薬品の非臨床安全性評価に関するガイドラインです。小児治療用医薬品の安全性確保のための幼動物研究(Juvenile Animal Study、JAS)を含む非臨床研究の方法について記載されています。小児では成長のため、PK、PD、副作用が大人と異なります。小児治療使用が想定される場合には、JASは開発初期に実施されることが推奨されるようです。PPND研究に動態研究を混ぜこんで実施する形も取られるようです。

小児医薬品の臨床開発はE11に従い行います。非臨床研究はE11に則る形で実施します。臨床開発計画には対象年齢、状況、治療計画を含むものとするようです。通常の医薬品では小児臨床開発前に、成人での臨床開発を実施します。臨床開発の状況に従い追加の非臨床研究を必要とすることもあります。致命的な病気、アンメットメディカルニーズではリスク・便益の判断が重要となります。

小児医薬品の非臨床研究では、Weight of Evidence(WoE)に従ったアプローチを取ることとされています。WoEアプローチでは、薬理・動態から証拠ベースでの検証を行います。証拠として複数の研究の結果を用い、JASの結果がヒトに適用可能かどうか判断します。WoEの評価は初期開発で行いますが、適宜考慮し直すとされています。WoEの要素として、最も若い患者層、器官成長への影響、既存データの有無、器官形成への薬理学的影響、医療効果の特異性、治療期間などがあります。治療を受ける最も若い年は安全性のリスクに大きく作用します。より若く投与を始める場合には、より多くの安全性の証拠を必要とします。

既存のデータも追加の検証の必要性を左右します。成獣非臨床、成人臨床、小児臨床の順で証拠としての重要性が高まります。治療期間はより長いほど成長への影響が大きくなるため、より正確な安全性の根拠が必要です。JASでは長期での動態が不明瞭となりやすいため、信頼性は高くありません。薬理の対象が成長に影響しうる器官などを含むかどうかも評価に影響を及ぼします。薬理効果の範囲が広いと安全性の予測が立ちにくく、逆に狭いと予測しやすくなります。小児では消化器官、肝臓、腎機能の成長とともに吸収や排出の特性が変化します。非臨床安全性研究の結果も重要な因子となります。複数種の動物の安全性研究の結果を必要としますが、成獣での結果が常に成人、小児への影響を反映しているものとはならないようです。動物研究で検証できる可能性についてもWoEの要素として重要となります。JASでの検証の信頼性が高くない要素もあるため、必ずしもJASでの評価が小児での結果をもたらすものではないと繰り返されています。