ICH Q2 分析法バリデーション Part 2: 分析法バリデーションの手法

ICH Q2は分析法バリデーションに関するガイドラインです。Q2はPart1とPart2に分かれており、Part2では分析法バリデーションで検証すべき項目について述べられています。分析法バリデーションの結果、計算方法は考察を加え、申請書に盛り込む必要があります。ガイドラインに記載されていない方法も利用可能です。バリデーションの方法は分析の目的に沿ったものである必要があります。すべての要素を同時に検証できるテストをデザインし、実施します。

分析法バリデーションでの検証項目として、Identification(同定)、Assay(定量)、Impurity(類縁物質、不純物)、Linearity(直線性)、Range(検出範囲)、Accuracy(正確性)、Precision(再現性)、Detection limit(検出限界)、Quantification limit(定量限界)、Robustness(頑強性)、システム適合性がガイドラインに記載されています。同定、定量、類縁物質についてはSpecificity(特異性)として検証することになっています。特異性を高めるため、2-3の試験を組み合わせて利用することが推奨されているようです。

同定(Identification)では、対象物質などと検体の結果を比較し、検体中の物質が対象物質と同じであることを示すことです。類似した構造を持つ物質の結果と混同しないことが重要となります。検証のため、類似した構造を持つ物質での測定結果との比較を行い、同定の精度を検証することもあります。AssayやImpurityでクロマトグラフを使用する場合には測定の対象物質に対するピークを同定しておく必要があります。クロマトグラフにおいてピークが分離した場合には、ピークごとにどの物質に当たるのか同定しておきます。非特異的な試験を用いる場合には、特異性を担保するための試験が必要となります。類縁物質/不純物の同定では、その類縁物質/不純物が手に入るかどうかにより、同定の手法は異なります。入手可能である場合には対照物質として用い、特定することができます。入手できない場合には局方記載の方法やバリデーション済みの方法を使用することになります。分解産物について検証する場合には、ストレス条件下で保管した試料を利用します。

定量などに用いる回帰の直線性についての検証も必要です。直線性を検証するため、有効成分の希釈系や製剤の混合物を用います。濃度とシグナル強度の関係は図示しますが、回帰の前に対数などの変換を行うことは認められているようです。相関係数、回帰の切片、傾き、残差和を申請書には記載します。回帰する点は5点以上を用いることが推奨されています。

検出範囲は直線性の検証から決定します。定量では80%-120%を検出範囲とすることが一般的です。含量均一性では100±30%、溶出性では規格値±20%を検出範囲とします。類縁物質は120%までを検出範囲としますが、毒性や薬理作用を持つ類縁物質には相応の考慮が必要です。

正確性については定量と類縁物質では異なる方法で検証します。いずれにおいても3つの濃度で合計9回以上測定し、正確性を検証します。有効成分を追加したときの定量値での回収率、平均値と真値の差、信頼区間を申請書類に記載します。有効成分には対照での分析方法を適用し、精度・直線性・特異性から正確性を推定します。製剤では処方成分での検証を行います。類縁物質では測定の対象とするもの(普通は有効成分)に対してどの程度の量まで測定可能かを明らかにします。

再現性には3種類あり、それぞれ検証する必要があります。再現性の指標としては標準偏差、相対標準偏差、信頼区間を用います。繰り返し再現性(Repeatability)は9サンプル以上を同じ測定者、同じ場所で測定し検証します。6サンプルは100%の値が得られる条件で実施する必要があります。室間再現性(Intermediate precision)は測定時のランダムな条件変化(測定日、測定者、測定機器)に対する応答を検証します。研究室間の再現性(Reproducibility)では、測定場所(測定する研究室など)が異なるときの再現性の確認です。申請書類への記載は必要ありませんが、日局試験の制定などでは重要となります。

検出限界は目視・機器による測定などで3つに分類されます。目視での検出限界は分析対象を目で見て検出できる最低濃度になります。シグナル/ノイズ比(S/N比)を用いる場合には、S/Nが3.0、もしくは2.1が検出限界となります。標準偏差を用いる場合には、検量線の傾きと標準偏差から検出限界を計算します。定量限界もほぼ同様ですが、S/N比を用いる場合には10が、標準偏差を用いる場合にはその数式が検出限界とは異なります。

頑強性は手法の変化が結果に与える影響の大きさのことです。故意に試験法を変更し、その時の結果が正しい試験法とどの程度違うのかによって判断します。結果への影響が大きい場合には適切な制御法が必要となります。

システム適合性はシステムが正確に測定可能であることを確認することです。システムには機器、操作、サンプルを含みます。適切に設定したシステム適合性試験を測定前に実施します。

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